KONTAKTでオリジナルの音源を作る
講師の鈴木です。
前回のBlogではLogic Pro Xの新機能を紹介しましたが、同時にアップデートされ、一部で話題になっているMainStage 3。MainStageはDAWを立ち上げなくてもソフトウェア音源が演奏できる! というライブ向けのアプリで、制作の世界的には「ふーん」的なアプリだと思うのですが、MainStageに新しく追加された「Auto Sampler」が激アツ! ということで、私の周りの作家陣もテンションを上げています(笑)。
Auto Samplerがどんな機能かと言うと、ハードウェア音源の音を自動的にサンプリングしてEXS24(Logicに付属するソフト・サンプラー)形式で保存できるということ。やはりワークフローを考えると利便性ではソフトの方が便利ですから。。 ということで、Auto SamplerのためにMainStage 3を買っている人も多いみたいです。値段も手頃ですしね。
オリジナルのライブラリを作ろう!
が、もちろんEXS24が使えるのはLogicだけですから、他のDAWユーザー的には微妙。という相談を受けたのがこのblogを書くキッカケだったりするのですが、オリジナルのライブラリ作り自体サンプラーがハードウェアだったころからの定番のテクニックだったりしますし、私自身も以前から使用頻度の高い音源はどんどんライブラリ化してしまっています。
今回は汎用性も高くて標準ソフトでもあるNative InstrumentsのKONTAKTで、簡単にオリジナルの音源を作る方法について紹介したいと思います。
ちょっとマニアック、かつ長くなりますが、よろしくお付き合いお願いいたします(笑)。
ライブラリ化に向いている音
オーディオ・エフェクトを掛けられたり、バウンスが楽などソフトウェア音源のメリットは沢山ありますが、個人的にはなんでもかんでもライブラリ化すれば良い…というのはちょっと違うと思っています。というのも、元々の音源の挙動をリアルに再現しようと思うと
相当なサンプル数が必要 = 重くなる/読み込みが遅い
ということになりかねません。そこで、私自身がライブラリ化するときの選考基準は
1.使用頻度が高いこと
2.シンセ音
3.ベロシティによる音色変化が少ない
という感じでしょうか…。1は言わずもかな、大切なのは2と3。個人的には、生楽器の音や表現力という面では、圧倒的にソフトウェア音源の方が優れていると思っているので、ハード音源のアコースティック楽器音色は使うことが希。ハードウェアのニュアンスをいくら忠実に再現しても、ソフトの専用音源には敵わなかったりしますし、手間を掛けるのもなぁ…ということもありあまりオススメはできないかと。もちろんハード音源の味やニュアンスが欲しいときは別です。
ベロシティーのレイヤーを組んだり…と少し手間が増えますので、サンプラーの使い方に慣れる意味でもシンプルな音色から挑戦するのがオススメです。今回はベル系の音色をライブラリ化してみます。
必要なもの
・ハードウェア音源
・ソフトウェア・サンプラー(今回はKONTAKTですが、HALionやMach Fiveなどでも可)
・DAWソフト(何でもOK)
・オーディオ・インターフェイス
・波形編集ソフト(DAWソフトでもOK)
※本文内ではハードウェア音源(Roland / INTEGRA-7)を例にしていますが、他の音源でもOKですし、オリジナルのオーディオ素材などにも応用可能です。
1.MIDIデータを打ち込む
まず最初に行うのは、素材となるオーディオ・ファイルの準備。MIDIキーボードなどで音源を演奏し、それを録音しても良いですが、ベロシティーが安定しないので打ち込みを使うのがオススメです。
サンプリングしたい鍵盤の範囲で、画像のようにMIDIデータを打ち込んでいきます。
このとき、何音おきにサンプリングするのかを決める必要がありますが、シンセ系音色の場合は1オクターブに3〜4音おき程度で十分だと思います。また、ノートとノートの間には無音が入るようにしておきます。サンプリングしたい音が持続音(永遠に鳴り続ける音)の場合は、音の揺れが安定する程度の長さを録っておきましょう。音色によりますが、3〜6秒程度録っておけばとりあえずは何とかなる気がします。。
ベロシティーによる鳴らし分けを再現する場合は、これをベロシティー単位で行います。このMIDIデータは他の音色でも流用ができるので、保存しておくと便利です。
なお、打ち込んだMIDIノート(サンプリング音)はメモ帳などにメモしておくと後の作業が便利です!
2.オーディオ化する
MIDIデータが打ち込めたら、オーディオトラックにまとめて録音します。この段階では1音ごとに分けて録らなくてもOK。録音ボタンを押して放置します。
アウトボードなどを持っている人は、音作りした状態で録音するのもオススメです。また、後々の使い勝手を考えると、シンセ側のエフェクトはOFFにしておく方が使い勝手が良いと思います。
3.オーディオを編集して切り出す
次に録音したオーディオを、1音単位で切り出していきます。ここでは波形編集ソフトを使ってイマスが、DAWソフトでクリップをカットしてバウンスするのでも大丈夫。使い慣れた方で作業します。この段階では、そこまでカットポイントに気を遣わなくても大丈夫ですので、サクサク操作していきましょう!
また、ノーマライズ処理などを行う場合は、オーディオをカットする前に全ての音に対して同じ倍率のゲイン調整を行います。そうしないと1音1音ごとに音量が揃ってしまい、演奏したときに違和感を感じたりします。
書き出したファイルは、音程を含む分かりやすい名前を付けておきます。ここで、1の作業で作ったメモが役立ちます!
4.KONTAKTに素材をマッピングする
素材が用意できたらKONTAKTの「Files」メニューから「NewInstruments」を選び、空のインストゥルメントを作ります。
画面左上のスパナのアイコンをクリックすると、中身が開くので、さらに「Mapping Editor」を開きます。
すると、下図左側のようなウィンドウが表示されるので、録音した素材を割り当てたい鍵盤にドラッグ&ドロップして配置していきます。
全部の音をサンプリングしたのではない限り、1つのサンプルで複数の音程を担当することになります。KONTAKTの場合、取り込めば自動的に音程をマッピングしてくれるので、マウス操作だけで簡単に割り当てていくことができます。
割り当てのコツですが、サンプラーはタイムストレッチの機能で音程を変化させているので、低い音を上方向に引っ張って使うのがオススメです。
ここまでできると、鍵盤で音を演奏できるようになっていますが、サンプルによっては鍵盤を押してから発音までのタイムラグがあったりするはずです。それを「Wave Editor」(上図下側)を使って微調整していきます。
具体的にはWave Editorボタンを押し、波形のはじまるタイミングに合わせて「s」(スタート)の位置と「e」(エンド)位置を指定します。画面上だけでなく、鍵盤で演奏してみて違和感がないかをチェックしておきましょう。
5.ループ範囲を設定する
元々の音色が持続音だった場合、同じくWave Editorでループ・ポイントを設定します。画面左下の「Sample Loop」をONにして、ループさせる範囲を探っていきます。ですが、手動だとかなり面倒! そこで「Loop Edit」ボタンを押せばループ・ポイントを見つけやすい画面が表示されます。
これも鍵盤で演奏してみて違和感がなければOKです!
こういった波形の処理が1番面倒なところですが、ここで手を抜いてしまうと、一気にライブラリとして使いにくいものになってしまうので耐えてください!! 慣れてくれば、割とサクサクできるようになる…ハズです。。
6.保存と微調整
これでひとまず完成! FilesメニューからSave Instrumentsを選び、保存しておきましょう。このとき、保存形式を「patch+sample」を選んでおくと、使用しているサンプル(オーディオ・ファイル)も一緒にコピーしてくれて便利。また、Sampleの保存場所を指定することもできるので、他のパッチと共通の保存場所を作っておくとスマートです!
最後に、元のハードウェア音源の音と聞き比べてみましょう。
何か違和感がある? そんな場合はアンプ・エンベローブを微調整してニュアンスを近づけていきます。また、音色によってはエフェクトをインサートしてもOKです。
終わりに
ということで、初めて作業するときは時間が掛かると思いますが、流れとコツが掴めれば決して難しい作業ではないので、ぜひオリジナルのライブラリ作りに挑戦してみてくださいね!