Waves / Studio Classic Collection レビュー
講師の鈴木です。
作家仲間や生徒さんも含め、DAW主体で曲を作っている人と話をすると結構な確立で話題にあがるのが「アウトボード」。すでに使っている人は「アレ、良かったよ!」という話を。プラグインしか知らない方は「やっぱりアウトボードって良い?」みたいな感じになりますが、やっぱり便利です。
といっても、昨今はプラグインもかなり優秀ですし、自宅なら(コスト的にも)プラグインで良いかなーと自分を言い聞かせていたりも(苦笑)。ということで、今回はWavesのバンドルの中でも人気アウトボードをシミュレートしたプラグインをバンドルした「Studio Classic Collection」をレビューしていきます。
Studio Classic Collectionは、3つのプラグイン・バンドルを1パッケージに凝縮した製品で、合計11種類のプラグインで構成されています。あまり目立たない製品だと思いますが、かなりコスパは高いのではないかと。
※記事を書いた後で、それぞれのバンドルを以前に書いていたことに気付くという失態を犯しました(涙 SSLだけ記憶にあった)。。読み返してみると似たようなことを書いていますが、最新のインプレッションということで…。
API 2500
先述の通り、個人的にも大好きなバス・コンプレッサーがAPI 2500。バンドル(プラグイン)自体は決して新しいものではありませんが、未だに使うことが多いプラグインです。
「COMPRESSOR」「TONE」「LINK」と3つのセクションに分かれています。
COMPRESSOE
パラメーターとしては非常にシンプルで、Threshold以外のパラメーターは選択式になっています。選択可能な数値は画面通りです。Releaseは「Variable」に設定した場合に限り連続可変可能です。
TONE
API 2500の大きな特徴が「TONE」セクションです。ここの設定によって、様々なキャラクターのコンプを切り替えることができるので、ここがAPI 2500を使う上でポイントになると言っても過言ではありません。ということで、ここは少し深めにふれておきます。
左側は「KNEE」。スレッショルド付近のコンプの掛かり方を調整するパラメーターですね。グラフで見ると、こんな感じです。
ハードにすればスレッショルドを超えたときに急激にコンプが掛かるように、ソフトではふわっとしたサウンドを作ることができます。言葉を言い換えれば、
- ハード=ハッキリと分かりやすいコンプが欲しい場合
- ミディアム=なめらか
- ソフト=自然なかかり具合
といった感じでしょうか。
「THRUST」セクションは、ハイパス・フィルターを掛けることで、帯域ごとにコンプのかかり具合を調整するパラメーターです。こちらも図で見てみましょう。
- ノーマル=全帯域に対して、同じコンプレッションを行います
- ミディアム=低域を減衰、中域がフラット。高域は強めにコンプレッションします。例えば低域が多いソースに掛ける場合には、このカーブがオススメ。低域だけコンプが強く掛かってしまったり、ポンピングを防ぐことができます
- ラウド=低域から高域に掛けてリニアな特性のフィルターが掛かります。20Hzで-15dB、20kHzで+15dBのカーブです
「TYPE」は、サウンド・キャラクターを切り替えます。パネルに「New」「Old」とある通り、新しめのサウンド、ヴィンテージなサウンドになります。この正体は、サイドチェイン・シグナルをどのようにルーティングさせるのか…というもの。
SSLのバス・コンプのようにパキッとしたVCAサウンドが欲しい場合はNew、スムーズ系のコンプが欲しい場合はOldと使い分ける感じです。
LINK
左右のサイドチェイン信号を同期させるかどうかを決めるのがリンク機能です。左右で広がりのあるサウンドに掛けてみると、違いが分かりやすいと思います。
サウンド・インプレッション
パラメーターでサウンド・キャラクターが変わりますが、基本的にはロック系にマッチするアメリカ〜ンでハッキリとした効き方。ドラムのステムはもちろんですが、オススメはエレキ・ギター。特に歪んだパワー・コードを左右でガッツリ! 的なアプローチの曲には凄くマッチすると思います。
API 550A & 550B
いわゆるレシプロ・イコライザーですね。3バンドの550Aと4バンドの550Bの2タイプが用意されています。
3バンドで各バンドごと5つの周波数ポイント、それぞれ5段階のブースト/カットが行えます。画面の青いつまみで周波数を選択、白いつまみで±12dBでブースト/カット量を調整していきます。
この仕様を見てわかる通り「音を作る」タイプのEQだと思います。カットというよりもブーストで使うのが気持ち良いです。特にドラムの皮モノで使うのが好きです。
また、個別のフィルターも搭載しています。
4バンドに拡張したのが550B。各バンドの周波数は一部被るように設計されているのですが、この被っている帯域が楽器の音作りでポイントになる部分なので、細かく音作りしたい場合には550Bがオススメです。
API 560
10バンドのグラフィックEQがAPI 560です。
DAW的には馴染みが薄いと思いますが、使い方が分かってしまえば凄く便利。まず、周波数に注目してみてください。
31Hz、63Hz、125Hz、250Hz、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz、8kHz、16kHz
と、倍々の関係になっているのが分かります。周波数が倍…、要するにオクターブ単位でEQしていけるということ。各バンドごとに12dBのブースト/カットができます。
また、単なるグライコというだけではなく、ブースト/カット量によってQが自動変化するのも特徴。変化量が大きい場合にはQが狭く、低い場合には広めのQで処理できます。
V-Comp
Neve 2254をシミュレートしたコンプレッサー・プラグインがV-Comp。2254というとピンとこない方もいらっしゃると思いますが、33609のベースになったコンプといえばイメージしやすいと思います。
バス・コンプレッサーとして使うのも良いですし、チャンネルにインサートしてもOK。欲しいキャラクターとマッチすれば、もの凄く汎用性の高いモデルです。
構成としては、コンプレッサー・セクションとリミッター・セクションで構成されており、それぞれ独立してON/OFFが可能です。
まずコンプ・セクションはレシオとリリース、さらにシンプルなディエッサーだけで、すべて数値選択式。スレッショルドがないので、INPUT量で調節するのがポイントです。このとき、メーター・モードを切り替えながら、イイ感じのサウンドが得られる場所を探ってください。
リミッター・セクションもパラメーターとしては非常にシンプルなので、特別説明するところはありませんが… AttackはFastが1μsec、Slowは1msecです。
サウンド・キャラクターは非常に濃いです。音の押し出しも凄いので、主張させたいパートにマッチすると思います。個人的に良く使うのは、ガッツリとコンプを掛けたいピアノ。刻み系のバッキングで常にコンプが掛かったような使い方をしています。潰してレベルを落としてもオケの中でしっかり主張してくれるので、そのような用途で使い勝手が良いかと。
V-EQ3 / V-EQ4
NeveのEQといえば1073! 1073を再現したのがV-EQ3です。
といっても、完全に1073をコピーしているのではなく、HFに周波数ポイントが追加されています。オリジナルモデルは12kHz固定ですが、V-EQ3は10kHzも選択可能。全体的にQカーブが広いので、ブワッとしたサウンドが魅力です。
各周波数ポイントが各楽器の”おいしい”ポイントに当たっているので、効果的な音作りが直感的に行えます。EQ的な音作りはもちろんですが、個人的にオススメなのがHP。ドラムや歪んだギターにHPを掛けてみて下さい。よく聴く音になりますよー。
V-EQ4は、1066をベースにしたプラグイン。単にバンドを追加しただけでなく、全く別のEQと考えた方が良いと思います。
個人的には、生楽器のように比較的EQポイントが決まっている楽器にはV-EQ3、シンセ系やボーカルにはV-EQ4かなぁ、と。
SSL 4000 Collection
大手スタジオの定番コンソールSSL。代表モデルであるSSL 4000をモデリングした4プラグインで構成されているのがSSL 4000 Collectionです。
以前に詳しく書いていますので、こちらをご覧下さい。