Waves / Vocal Rider

Waves / Vocal Rider
講師の鈴木です。
今回は久々のWavesプラグインの登場です。

最近のレッスンで1番多いのはミキシングについてです。オンラインのレッスンでは、生徒さまのプロジェクトを送って頂いてこちらで軽くミックスし、それを聞いて頂きながらアドバイスさせて頂いているのですが、まずお話しているのは「ミキシングの基本はボリューム調整」ということです。

ボリューム・フェーダーはもちろんですが、パンだって左右の音量な訳ですし、もっと言えばEQは帯域ごとの音量。コンプは時間ごとの音量と考えることだってできる訳です。 …話が逸れてしまいましたが、今回はボリューム・コントロールに革命を起こしたWavesの「Vocal Rider」を紹介します。ボーカルの音作りに関しても、少し触れてみようと思います。
http://www.minet.jp/brand/waves/vocal-rider/

ボーカルのボリューム・コントロールは面倒臭い

楽曲の中でもっとも重要で、手を抜けないのがボーカル・トラックだと思います。もちろんそれ以外のパートは適当で良いという訳ではありませんが、1番耳に付くパートなので、ボーカルの処理が上手く出来ているかどうか(歌の上手い下手は別にして)は、曲の仕上がりに大きな影響を与えてしまいます。

そんなボーカルの処理にも色々なプロセスがありますが、中でも面倒なのがダイナミクス・コントロールです。人間が歌っているので、どうしても音量差が生まれてしまい、そのままでは聞きにくいボーカルになってしまいます。それを防ぐためにコンプなりフェーダー・オートメーションを使ってレベルを均一化していく訳ですが、これってかなり面倒な作業です。特にオートメーションは細かく追い込んでいくと、これだけで相当の時間が掛かってしまいますよね。

そんなボーカルのダイナミクス・コントロールを自動化してくれるのが、今回紹介するWavesのVocal Riderというプラグインです。
発売してすぐ導入して、その便利さに感動(笑)。個人的にも、恐らく1番多用しているWavesプラグインだと思います。

基本の使い方は超簡単

そんな超便利なVocal Rider。使い方も超簡単です。基本的な流れは、こんな感じです。

①ボーカル・トラックにインサート
トラックにインサートします。インサート場所は、目的によって変わってきます。この辺りは後ほど詳しく紹介します。

②Targetを設定する
2016_vocalRider_2画面最上部のスライダーで、ボリュームの基準値を設定します。ボーカルのレベルが黄色いメーターで表示されるので、その動きを見ながら合わせて行けばOK。コンプのThresholdのようなものだとイメージすると分かりやすいと思いますが、ここで設定した数値がVocal RIder上の”0dB”に設定されます。
ガッツリとピークを潰したい場合は、少し高めに設定することでフェーダーがカット方向を中心に動くようになります。

③感度を調整する

2016_vocalRider_3
Vocal(Sensitivity)でVocal Riderの補正感度を決めます。感度を上げればフェーダーの動きが細かくなり、反対に下げれば動きが鈍くなります。

④Attackを決める

2016_vocalRider_4

効果が掛かるスピードを決定します。コンプのAttack Timeと同じ感じですが、Vocal Riderの場合はFast / Slowの2段階です。

⑤フェーダー・レンジを決める

2016_vocalRider_5
Riderフェーダーの左にあるRangeスライダーで、フェーダーの稼働範囲を調整します。

 

どこにインサートするのがポイント

基本的には、これだけでイイ感じにボーカルのレベルを均一化してくれます。ここで注意して欲しいのが「どこにインサートするか」という点です。これによって、Vocal Riderの効果がまったく変わってきます。

ケース1.シグナル・チェインの先頭にインサート
ボーカル・トラックの先頭にインサートした場合は、フェーダー・オートメーションを自動化するというよりも、後段にインサートするであろうコンプの掛かり方を均一化するという意味合いが大きくなります。通常のフェーダー・オートメーションではカバーできない部分なので、ここで使うのはかなり効果的です。

ケース2.エフェクトの最終段にインサート
他のエフェクト処理の最後にインサートする場合は、コンプやEQで処理された後の最終的なボーカルの音量をコントロール…つまり、フェーダー・オートメーションに近い挙動になります。

オートメーション機能を活用する

Vocal Riderにはオートメーション機能がありますが、ここで疑問なのが「インサートするだけで動くのに、どうしてオートメーションを書き込む必要があるのか」ということ。Vocal Rider自体は非常に軽いのでそのままでもいいんですが、プラグインが機械的に作ったボリューム・カーブが必ずしもベストとは言えないケースがあるためです。フェーダーの動きをDAW上に書き込むことで、細かい微調整が効くようになります。
基本的に、インサートするだけでも「処理前より圧倒的に聞きやすい」サウンドにはなってくれると思いますが、まったくエディットが不要という訳にはいきません。そもそも、レベルを均一化した状態が”良い”とも限りませんので。。とはいえ、ある程度の下書きをしてくれるだけでも大幅な時間短縮になるのでVocal Riderは重宝します。

2016_vocalRider_6

また、Pro Toolsの様にオートメーション・パラメーター間でコピー&ペーストができるDAWの場合、Vocal RiderのFader情報をボリューム・フェーダーのオートメーションにコピーして使うこともできます。こうすることで、フィジコンのフェーダーを使ってエディットができるので、作業効率はもっと上がります。
ちなみに、Pro Toolsでオートメーションを変換する場合は、通常のペーストではなく「特殊ペースト」というコマンドを使います。

 

サイドチェインを受けることもできるが…

また、Vocal Riderにはサイド・チェインでボーカル以外のオケの信号を受けることで、オケの音量に合わせてボーカルの音量を最適化してくれる。なんて機能もあるのですが、上手くいった経験がありませんので、あまり期待しない方が良いかと思います(苦笑)。もちろん曲によっても変わってくると思いますが、自分でレベルを取った方が早いと思います。
逆に、この機能が生きるのは弾き語りなどでのライブでしょうか…。

ボーカルのシグナル・チェイン例

最後に、私が普段ボーカル処理に行っている手順を紹介します。もちろんボーカリストの声質や曲調に合わせて変わりますが、基本的にこんな流れでやっている人がいる、という参考程度に見て下さい。

①ボーカル修正
コンピングのテイク選定が終わった状態で、ボーカル修正をします。このとき、ピッチとタイミングはもちろん、ノートごとのゲイン調整もやっています。ここでは、発声などの問題で歌詞が聞こえにくかったり、強くしたい部分を強調してあげるといった修正がメイン。つまり、ボーカル修正が終わった段階で、歌詞の聴き取りにくい部分はある程度補正された状態になっています。
そして、修正したトラックを別のトラックに内部ルーティングして、ダビング。修正前のトラックをミュート状態にしています。
また、バラード系などヒラとサビの音量差が大きい場合には、トラックを分けて作業します。こうしないと、コンプの掛かり方にムラが出たりと色々と無理が出るので。。クリップ・ゲインなど、インサート・スロットに入る前にレベルを整えても良いですが、トラックを分けちゃった方が早いと思います。

②EQ1
まず1段目に不要な低域をカットします。その他に気になる部分があればEQしてしまっても良いと思いますが、ここではブーストはせず、不要な要素を取り除くようなイメージでやっています。カットで使うのはデジタルEQ。WavesならREQでもQ10でもなんでもOKです。余談ですが、同じ設定でカットしても、掛かり具合はプラグインによってかなり違ってくるので、よく使うプラグインは特性を知っておくと便利だと思います。

③Vocal Ridarでレベルを均す
ここでVocal RIderの登場! ボーカル補正の段階である程度ダイナミクスは調整できているので、ボリューム・オートメーションを作るというよりもコンプ的な意味あいで使っています。コンプの場合、どんな優秀なプラグインでも少なからず音質が変わってしまいますが、Vocal Riderは音量を上下させているだけなので、音のキャラクターが変化しないというのがポイントです。

④コンプ1
コンプで音にキャラクターを付けます。特にLA-2AやCL-1Bのようなアタックの遅いコンプがマッチすると思います。ここでガッツリ潰さなくても大丈夫です。

⑤コンプ2
次段では、反対にアタックの早いコンプをインサートして、しっかりコンプレッションを掛けていきます。定番はやっぱり1176系ですね。タイプの異なるコンプを二重掛けすることで、立体的な音を作れると思います。

⑥EQ2
最後にEQで最終的なトーン補正をします。ブーストで使うなら、デジタル・タイプよりもPultecやNeveのようなアナログ・モデリング系がオススメです。

⑦オートメーション
必要があれば、フェーダーでオートメーションを書きます。

ベースにはBass Rider

Vocal Riderはボーカルの帯域にマッチするように作られていますが(ボーカル以外に使ってもOKデス)、低域に最適化したのが「Bass Rider」です。
ベースもダイナミクス差が激しいパートなので、コンプでガッツリというケースが多いと思いますが、コンプの前段にBass Riderをインサートすればコンプの掛かりを均一化できるだけでなく、「音の変わらないコンプ」として使うことができて重宝します。

2016_vocalRider_7

ということで、ダイナミクス・コントロールの作業効率を飛躍的に高めてくれるVocal RiderとBass Rider。どちらも超オススメです!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。