IK Multimedia / AmpliTube 4 レビュー
講師の鈴木です。
今回はアンプ・シミュレーター・プラグインの定番、IK Multimedia社のAmpliTube 4を紹介します。
このカテゴリでは、AmpliTube以外にもNative InstrumentsのGuitar Rig 5やLINE 6のPOD FARM、WAVESのGTR、OverloudのTH3やPeaveyのReValver辺りが定番でしょうか。最近だとPositive GridのBIASシリーズも人気ですね! UADシリーズからもアンプ・シミュレーターが出ていたりしますが、これらも一通り揃えているのですが、個人的にはAmpliTubeが1番好きだったりします。
完成度の高いMarshallサウンド
AmpliTube 4から追加された5タイプのアンプ・モデルから見ていきます。これらの新モデルは「Classic Brit Collection」というカテゴライズで収録されており、5タイプのMarshallアンプをモデリングしたモデルで構成されています。
・Brit Valve Pre
チューブ・プリアンプ「JMP-1」のモデリング。
・Brit 8000
定番の「JCM800」のモデリング。
・Brit 9000
JCM800の後継として登場した「JCM900」のモデリング。
・Red Pig
いわゆる「Plexi」のモデリングで、こちらもアンプ・シミュレーターではお馴染み。
・Brit Silver
昨年復刻版が発売された「Silver Jubilee」のモデリング。
全体通して、とにかく音が良い! という印象です。実はAmpliTube 3が出た当時はまったく音が好きになれなかったんですが、Custom Shopとして有名メーカーのシグネチャ・ギアの販売が開始された辺りから急激にIK Multimediaのモデリング技術が向上したように感じます。これはT-RackSも同じで、昔からあるギアは正直「うーん…」という出来なのですが、最近のモデルは同じメーカーとは思えない完成度に達していると思います。
話をClassic Brit Collectionに戻しますと、アンプ・モデリング系の製品には必ずといって良いほどMarshll…特にJCM800やPlexiのモデルが収録されていますが、これまでネイティブのプラグインは歪み過ぎていたり、高域だけがカリカリ。モノによってはまったく似てないじゃん! という印象を持っており、これまでプラグインでMarshallの音を使おうと思いませんでした(苦笑)。が、これらはかなりリアル。ゲインやギター側のボリュームにもしっかり追従してくれますし、Marshall独特のジャリっとした質感も従来のプラグインから大幅な進化を感じました。
ド定番ではありますが、プリ・ペダルにチューブ・スクリーマーを噛ませるだけで気持ち良く弾けます。
さらにリアルになったキャビネット部
プリ(アンプ)以上にクオリティーを左右するのがキャビネット。以前にもキャビネット・シミュレーターについてblogを書いていましたが、これまではキャビネット部はバイパスしてRedWirezのIRを組み合わせて使っていたのですが、なにぶん操作性が悪い!
そんなことでAmpliTube 4でキャビネット・モデルが新しくなったということで期待していたのですが、音に関しては期待以上でした。キャビネットは5つのセクションから構成されています。
まず「キャビネット・タイプ」でヘッドと独立してキャビネットを選べます。ビジュアル的にも実機に近づいています。従来通り「MATCH」ボタンをONにすればヘッドとリンクして自動的に同期してくれます。また、キャビネット・サイズを調整できるのもAmpliTubeならでは。トーンの微調整に使うことができます。
2つ目が「スピーカー」セクション。スピーカー・ユニットを切り替えられるという超マニアックな使い方ができます。音の滑らかさやざらつき感を微調整することができます。
そして「マイク」セクションでは、使用するマイク・モデルとマイキング・ポジションを設定します。キャビネット全体のモデリング制度が上がったからか、3の頃よりも実機のマイキングに近い感覚で使えるようになりました。モデリングでは実機通りにマイキングしても上手くいかないことの方が多いですが、この進化によってかなりストレスが減りました。
「ルーム」セクションではアンビエンスを指定できます。環境はBig Live Room、Booth、Garage、Venue、Studio A、Studio Bの6タイプから選択可能で、アンビ用のマイク・モデルやステレオ幅も変更可能です。
2本のマイクとアンビをまとめるのが「ミキサー」セクション。2本のマイクが独立したことで、より緻密なボリューム調整が行えるようになっています。またD.I.で素の音も加えられるのはベース使用時に便利です。
音的には大満足なのですが、操作性はイマイチ。具体的には各マイクのソロ/ミュートがこのミキサー画面からしか行えないので、音作りの際にはマイクとミキサー画面を行ったり来たりすることが多いかと…。またマイク画面でもマイク1/2を同じ画面内で移動させることができないので、どうしても切り替え操作が増えてしまいます。
もちろんマイク位置は左側の画面内のマイクのグラフィックをマウスで直接コントロールできますが、微調整するときには少し面倒です。とは言っても音的には向上したので納得できます(笑)。個人的には、各フェーダーをDAWにパラ・アウトできるともっと便利なのになぁ、とか思ったり。
面白くて実用的なチューナー
「UltraTuner」も新機能。チューナーに新機能? と疑問に思っていたのですが、触ってみるとかなり便利です。一般的なチューナーは画面内のLEDで合わせていきますが、UltraTunerは同時にピッチの時間的推移と波形を見ることができるという非常にユニークなもの。ギターの場合はピッキングのタイミングで一瞬ピッチが上がり、その後落ち着いていく(ギターによってマチマチではありますが)…と時間によって微妙にピッチが揺れるものですが、その様子を目で見ながらチューニングしていくことができます。精度的にも1/100セントと高精度です。なお、従来のチューナーも引き続き搭載されて起動時にはそちらが起動します。
その他にもアコースティック・シミュレーターのストンプ・ボックスの追加や、プリとパワーの間にインサートできる「エフェクト・ループ」機能が拡張されています。またスタンドアローンで使う際にはマルチトラック・レコーディング機能やルーパー機能も利用できるようです。
AmpliTube 4とAmpliTube 4 Deluxe
最後に、AmpliTube 4には、無印版とAmpliTube 4 Deluxeという2つのパッケージが用意されています。Deluxe版にはAmpliTube 3から厳選された101ギアが付属…ということ。逆に言うと無印版のAmpliTube 4には”AmpliTube 3で含まれていたモデルは含まれない”という少し変わった構成になっています。とは言ってもAmpliTube 3のユーザーは3に付属していたギアと、Custom Shopで購入したギアはAmpliTube 4上で引き続き利用可能。
イメージ的には無印版はAmpliTube 3のユーザーと、MarshallアンプだけでOKというユーザー。 Deluxeは初めてAmpliTubeを購入する方で色々なアンプ・モデルを使いたいというユーザー向け、という感じでしょうか。
なお、キャビネットのモデリング・エンジンが変わったことが原因だと思うのですが、AmpliTube 3で作ったプリセットは「コンバート」することで4でも利用可能です。コンバートしてもサウンドは良くも悪くも変わってしまうので再設定は必要。手間ではありますが、クオリティー的にはより追い込めるのでそこは我慢…といったところでしょうか。