IK Multimedia / T-RackS Black 76 レビュー(動画あり)
講師の鈴木(@dawlesson)です。
前回に引き続き、T-RackS モジュールを紹介しています。T-RackSモジュールは現段階(2018年1月)で37種類が販売中…。すべてコンプするつもりなのですが、どこから手を付けたものか…と悩んだ挙げ句、思考を停止して、人気順にやっていこうと(苦笑)。
が…。人気1位は「Mic Room」というマイク・モデリング・プラグイン。今すぐに使える素材がなーい! ということで、2位だった「Black 76」というコンプレッサーから紹介していくことになりました。
※追記:ランキングってリアルタイムに変わるんですね…。今はランキングが変わっていました 汗
今回も動画を作っています。動画も頑張っていきたいなぁ…と思っているので、ぜひチャンネル登録&高評価を頂けますとm(_ _)m
1176 FET Compressor / Limiter
このBlack 76は、ご覧頂いて分かるとおりUniversal Audioの1176をモデリングしたプラグインです。
スタジオには、必ずと言って良いほど常設されている、ド定番コンプ。1176には色々なリビジョンがありますが、Black 76は現行の”LN”と”Rev.E”をベースにしているようです。ちなみに、LNはLow Noiseの略だったと思います。
1176の特徴と言えば、最速設定時では20msecという何と言っても高速アタック・タイムによるサウンド。デジタルのプラグインでは、もっと速いアタックが設定できるものも珍しくありませんが、ハードウェアとしてはかなり特徴的ですよね。
パラメーター解説
動画でも紹介していますが、主なパラメーターについても見てみましょう。
INPUT
入力レベルを調整します。入力レベルは、同時にコンプレッション回路のスレッショルドを兼ねています。ちょうど、歪み系エフェクターやアンプにレベルを突っ込むと歪み始める…みたいなイメージです。
OUTPUT
入力を大きくすれば、当然出力レベルも大きくなります。出力レベルをコントロールするのがOUTPUT。INPUTを上げたらOUTPUTを下げ… と、バランスをとっていきます。
よく、ツマミの位置は「10時(IN)2時(OUT)」を基準…なんて言われていますね。
※アナログとデジタルはそもそも扱っている基準レベルが違うので、プラグインによってはこの限りではありません(Black 76の場合はこの設定でもOK)。GRメーターとサウンド変化を確認しながら設定してください。
RATIO
Ratioは4、8、12、20の4段階。当然、数字が大きくなるほど圧縮率が上がり、リミッター的に動作するようになります。
また、ALLボタンを押せば「全押しサウンド」の再現も可能。スネアやドラム・バスの定番テクニックですね。
ATTACK
入力音がスレッショルド・レベルを超えてから、コンプが圧縮を始めるまでのスピードを20msec〜800msecの間で調整します。ツマミは、右方向に回すと速くなるので、ちょっと注意してください。
RELEASE
リリース・タイムです。20msec〜1,100msecの範囲で、スピードを調整します。こちらも時計回りに回すと速くなります。
METER
VUメーターの挙動を選択します。GRではGain Reduction。+8、+4は出力レベルをメーター表示します。
歪みも再現した存在感のあるサウンド
Black 76を使う上で、ぜひ知っておいて欲しいのが、Attackツマミの下にある「OFF」。このボタンをONにすると、コンプレッサー回路がOFFになります。
これは実機にもある機能なのですが、コンプはOFFにしてもプリアンプ回路は通るので、コンプを掛けずにディストーションだけを付加…つまり、1176をサウンドの色付けに使うことができます。
この歪みサウンドの再現が、アウトボードのモデリングのキモだと思っているのですが、これが中々イイ感じ! 倍音が付加されることで、音量はそのままにオケ内での存在感が1段階アップするので、主張させたいパートに最適だと思います。
これもインプット量に比例するので、サウンド変化が欲しい場合はINPUT高め、OUTPUT下げ目のセッティングを試して見て下さい。
他の1176モデリング・プラグインとのサウンド比較
以前の投稿で、主要な各社の1176プラグインを比較試聴したことがあるのですが、同じ1176モデリングでもメーカーによってサウンドは別モノ。もちろんコンプの掛かり方は似ているのですが、同じ設定でも明確な差があります。
上の記事は、T-RackS 3エンジンでしたが、T-RackS 5になって各モジュールの音も変わっているかと。厳密にチェックした訳ではありませんが、旧モジュールと新モジュールを同じ設定で書き出し、片方を逆相にしても思いっきり音が残りますので、間違いないかと…。
で、どう違うかと言えば、新モジュールの方が低域がスッキリして締まりがあり、高域も若干大人しい印象。重心が一段階落ちたような感じで、個人的には新モジュールの方が好み。
というか、以前のT-RackSモジュールで気になっていた、大ざっぱ感というか、ロックで荒々しいサウンドが、解像度が高くてしっとり落ち着いたサウンドに変化したような。アウトボードを通したときの質感に近いのは、断然新モジュールだと思います。
1176モデリングでは、個人的にNo.1と思っていたUADの1176 Collectionと聴き比べてみると、UADの方がさらに上品。IKの方がガツンとくるサウンドなので、ドラムや歪んだギター/ベースにはIK。ボーカルにはUADという風に使い分けています。
新モジュール版の1176比較もやってみるのも面白いかも… なんて思ったのですが、興味ありますか?? 需要があればやってみようかと。