Line 6 / Helix Native レビュー

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講師の鈴木です。

ここ数年のデジタル系制作機材でもっとも大きく進化したのが、ギター・モデリング・サウンドではないかと思います。TDMプラグインとしてPOD Farmが出てから結構な年数が立ちますが、ここ何年かで急激に「本物」に近づいたような気がしています。

ということで、今回はアンプ・モデリングの火付け役でもあり、最先端のLine 6からリリースされたばかりのHelix Nativeを紹介してみようと思います。以前使っていたHD自体のモデリングや、他社製品との比較も盛り込んでみました。

目次

HelixシリーズとHXモデリング

ご存じの通り、最初はハードウェアとして登場したHelix。Axe-FxやKemperなどハイエンド・モデルと競合するモデルとして、実際に使っている周りのギタリストからも良い評判を聞いていました。

私自身、店頭でしか試したことがありませんでしたが、確かにこれまでのLine 6製品とは違うな…という印象を受けました。

ただ、フロア・モデルで約20万。その後に発売されたLTでも10万オーバーと、少し勇気がいる価格だったのも事実。特に、制作やレコーディングで使うだけならBIASやAmplitubeなどプラグインも優秀だし…という方も多かったと思います。

そんな中で、Helixのプラグイン版が発売する! というアナウンスが出たときは、大きな話題になりました。

…と、前置きが長くなりましたが、プラグイン版の「Helix Native」は、ハードウェア版と同じHXモデリング・エンジンが採用され、ハードウェア版とパッチの互換性もあるということがまず大きなポイントです。

収録アンプ・モデルは60種類以上、30種類以上のスピーカー・キャビネット… とふわっとした表現になっていたので、せっかくですしアンプとキャビネット、マイクをリスト化してみました(笑)。今後のアップデートで拡張される可能性がありますが、必要な方はご自由にダウンロードしてお使い下さい。※画像をクリックするとフルのpdfが表示されます。

使い方は超かんたん

プラグインとしての使い方自体は、超シンプル。ハードウェア版のインターフェイスが、そのままパソコンに移植されたような(というより、HelixのEditor)イメージです。

画面左側が信号の入力。右側に向かってシグナル・ルーティングが組まれており、任意のポイントに使いたいエフェクトを配置していくタイプ。ポイントをクリックして、画面下部から使いたいアンプやエフェクト・モデルを選んでいきます。

エフェクトのタイプによって文字とブロックが色分けされているので、迷うことはないと思います。そして、そのまま画面下部でパラメーターを弄っていくことができます。

パラメーターのエディットは、POD Farmのようなアンプやエフェクトを模したインターフェイスではなく、数値で作っていくスタイル。もちろんテンキーで直接数値を指定することもできます。

ローゲインがもの凄く良くなった!

実際のサウンドはどうなのか…というと、POD HD時代と比べても、もの凄く良くなったと思います。POD…というよりLine 6のサウンド傾向として、オケに馴染みやすく扱いやすい印象があったのですが、その特徴はそのままに、表現力やダイナミクスが劇的に向上しています。

曲に入れる際にも、EQやコンプをあまり意識しなくても、ちゃんとハマってくれるので、凄く使いやすいと思います。※誤解のないように補足しておくと、音ヌケが悪いという意味ではありません。

元々定評のあったハイゲインはもちろんですが、ロー・ゲイン。特にクランチ系のクオリティーがHD時代と比較して飛躍的に向上したように思います。MatchlessやDr Zのようなブティック系はもちろんのこと、MarshallのJCM 800もゲインを落とせば、しっかりクランチしてくれるのはちょっと感動。

逆に言えば、イメージした音を作るためには、エフェクトとの組み合わせや「どこで音を作るのか」といった、より本物のアンプに近い考え方が必要になるのかなぁ、とも。

SagやBiasといったパラメーターも、もちろん用意されています。

キャビネット・モデルもパワー・アップ

単純に音のリアルさというだけでなく、弾いているときの気持ち良さも向上しているのですが、これはアンプ部はもちろん、キャビネットやマイク・モデルの進化も大きいような気がします。

こちらもHXキャビネット、という名前が付けられているようですが、モデルやパラメーターを変えると音だけでなく、弾き心地までちゃんと変わってくれるので、かなり面白いです。

また、外部のIRにも対応しているので、サードパーティーのIRを使う場合にも別途プレイヤーを用意しなくて良いのも楽。IRを使う場合は、事前にIRスロットにファイルを読み込んでおき、それをIRモジュール内で呼び出すという方式で、ロー/ハイ・カットやMix調整も行えます。

面白いなーと思ったのが、「Amp+Cab」、「Amp」、「Preamp」、「Cab」とアンプとキャビがセットになったモジュールに加えて、個別モジュールも用意されていること。Amp+Cabモデルでは、アンプを変更するとキャビネットも同期して適したモデルに切り替えてくれる仕組みです。

Amp+Cabモジュールを使う場合と、AmpとCabを両方配置する場合で、音が変わるということはなさそうですが、こうすることでルーティングの自由度が向上します。

ルーティングも自由自在

Helix Nativeはエフェクト・ブロックをドラッグするだけで、ルーティングも自由に変更することができますので、1Amp + 2キャビの設定も自由に行えます。

キャビネット・モジュール単体でも「Dual」としてモジュール内で異なる2つのキャビネットを組み合わせて使うことができますが、細かく作り込みたい場合には独立させてしまった方が音作りは楽かなぁ、と。もちろん同じキャビ・モデルでマイク・モデルだけ変える、なんて定番セッティングももちろん効果的です。

信号を分けるスプリット・ポイントは、単純に同じ信号を分配するだけでなくA/Bや周波数で分割するといった設定もOK。レコーディング用途で使う場合は、そこまで複雑なルーティングをする必要はないかもしれませんが、空間系やモジュレーションを積極的に活かす場合にはかなり便利です。

オートメーションも楽

良く使うものだと、ワウ・ペダルあたりだと思いますが、パラメーターのオートメーションを書きたい場合もあると思います。

Helix Nativeはオートメーション・コントロールもかなり効率的に行えます。まずは、オートメーションでコントロールしたいパラメーターを右クリックして、プラグイン上に登録します。Knob、Switchそれぞれ16個まで登録可能。あとは、DAWのオートメーション・レーンで割り当てたコントローラーをアサインするだけです。

買い増すべき?!

Helix Nativeを気にしている人の多くは、すでに何かしら他のアンプ・シミュレーターを使っていて、買い増すかどうか、で悩む人が多いと思います。

現段階で、Helix Nativeの国内価格は発表されていませんが、本国価格で$399.99。ハード版やPOD Farmを持っているユーザーには、優待価格も用意されています。試してみた印象と、サウンド・クオリティー、収録内容を考えるとかなり良心的な価格だと思います。

やはり、Helixの音が好みかどうか、ということになってしまうと思いますし、サウンドに関しては完全にすき好みの域を出ませんが、個人的にはユーザー・インターフェイスを含めた総合点としては、BIASやAmpliTubeなど他の定番ソフトと比べた時に、1番平均点が高いのはHelixかなぁ、と。

CPU負荷も昨今のアンプ・シミュレーター・プラグインの中では軽い部類だと思いますし、持っておいて損がないのは間違いないと思います。

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