Waves / JJP Analog Legends レビュー
講師の鈴木です。
今回のレビューは、久しぶりのWavesシリーズ! JJP Analog Legendsをピックアップしてみました。Wavesのラインナップの中では地味目というか、あまりフィーチャーされることも少ないプラグインだと思いますが、個人的には結構好きだったりします。
JJP…ジャック・ジョセフ・プイグという有名エンジニアの名前を冠しているというだけでも興味を惹かれます。ちなみに、氏はU2やメアリーJブライジ、グリーンデイなどを手がける超売れっ子。そのサウンドメイクに欠かせない4つの伝説的なハードウェアをシミュレートしたのが本バンドルです。
PuigChild 670
Fairchild 670という真空管コンプレッサーをモデリングしたのがPuigChild 670。いわゆるビンテージと呼ばれる機材の中でもかなり高価で希少価値の高いコンプです。真空管を使った製品の多くは、信号の増幅のために使われていますが、Fairchildはゲイン・リダクションに真空管を使っているのがユニークな点。非常に評価の高いモデルなので、Wavesに限らず色々なメーカーからシミュレート・プラグインやコピー・モデルが販売されていますね。
一般的なコンプレッサーには、アタック・タイムとリリース・タイムという2つのパラメーターがありますが、Fairchildの場合はタイム・コンスタントというパラメーターがこれに相当し、6ポジションからの選択式というユニークなデザインです。
各ポジションのときの、それぞれのアタック/リリース・タイムは以下のような感じです。
・Position 1
Attack: .2 ms
Release: 0.3 seconds
・Position 2
Attack: .2 ms
Release: 0.8 seconds
・Position 3
Attack: .4 ms
Release: 2 seconds
・Position 4
Attack: .4 ms
Release: 5 seconds
・Position 5
Attack: .4 ms
Release: プログラム依存、トランジェント・ピーク:2 seconds、マルチピーク:10 seconds
Position 6
Attack: .2 ms
Release: プログラム依存、トランジェント・ピーク:0.8 seconds、マルチピーク:10 seconds
マニュアルによると、この数値は実機の公表値ということで、実際の出音に受ける印象とは結構差があるように思います。。が、逆に数値的な小難しいことを考えなくても使えるのが特徴。コンプを知らなくても、Thresholdを下げてタイム・コンスタントを適当に切り替えるだけでそれっぽい音が作れちゃいます。
FairchildのシミュレーターはUADやIKからも出ていますが、どれもキャラクターが違って面白いですね。Puigchildはそんな中でも輪郭のハッキリとしたハイファイな印象なので、キーボードやシンセなど上モノ系に使うのが好きだったりします。
ちなみに、MSにも対応しています。PuigChild 660はモノラル・バージョン。
PuigChildにはハードウェア版もあるので、1度触ってみたいなぁ。
PuigTec EQP-1A
大好きなEQの1つ、Pultec EQP-1Aをシミュレートしたプラグインです。
いわゆるPultecスタイルのEQの特徴は、同じ周波数のブースト/カットが同時にできるということ。単純に算数的に考えると±0になってしまいそうですが、これによってレゾナンス・シェルフを作り出すことができるのです…と言葉だけだと分かりにくいと思いますので、アナライザーでチェックしてみましょう。
今回は分かりやすいようにピンク・ノイズに対して処理を行って特性を見ていきます。まずは素の状態。
これに、EQP-1Aで100Hzを最大までブーストすると…
逆にアッテネート(カット)してみると…
ここまではイメージ通りだと思います。では最後に両方を最大までブースト/アッテネートすると…
ブースト方向が優先されますが、ブースト・カーブの境界付近にアッテネートの要素が混ざり、ディップのポイントが生まれます。こうすることで、より音を際立たせることができる…という仕組み。基本的にはブースト専用の音作りのためのEQです。こういったカーブはEQで音作りするときのコツだったりするのですが、意識せずにカッコ良い音色が作れるんです。
EQP-1Aもさまざまなメーカーからシミュレートが出ていますが、やはりWavesはハデ(苦笑)。インサートするだけでローが若干膨らんでレベルも上がるので、太くなったかのように聞こえると思います。そういった特性のため、分かりやすいアナログ感を追加したいときにはPuigTec EQP-1Aは活躍してくれます。
PuigTec MEQ-5
EQP-1Aはローとハイの2バンド構成ですが、不足したミッドレンジを担当するのがMEQ-5です。
PEAKでブーストしたいポイントを選択したら、DIPでレゾナンス具合を決める…というシンプルなコントロールです。
数値を見ないのがコツ
ということで、JJP Analog Legendsのプラグインを見てきましたが、アナログ系のプラグインを使うときのコツはパラメーター(数値)を見ないこと。EQP-1Aのカーブを見てもわかる通り、パネルに書かれた数値は結構ルーズです。数値で音をイメージすると、出てくる音とのギャップに混乱してしまうと思います。
逆に数値的に”こう”と細かいことを考えるのではなく、”こんな感じかな?”とグイッとツマミを上げて耳で判断してみて下さい。感覚的に使えるので作業が楽ですし、なにより音作りを楽しめると思います。
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