Waves / Lシリーズを比べてみました!
講師の鈴木です。
久しぶりのWavesシリーズ。今回はWavesの数あるプラグインの中でも、特に人気の高い「Lシリーズ」を比較してみました。色々なタイプがありますが ”どれが優れている” かではなく、用途に応じて使い分けるのが大切なような気がします。
L1 Ultramaximizer
まずは、Lシリーズで最初にリリースされたL1から見ていきましょう。音のピークを先読みするオーソドックスなピーク・リミッターです。
使い方は至ってシンプル。「Out Celling」で最終的な出力レベルを決めたら、「Threshold」でリミッターの掛かり具合を調整するだけ。不自然なポンピングを防ぐ「Release」や、ビット解像度の再クオンタイズ機能も用意されています。
少し古いプラグインということもあり、L3などと比べてしまうとサウンドの変化は大きいです。音を突っ込めば突っ込む程に高域が出てしまいますし(これは多くのリミッターに共通していますが…)歪むのも早いです。
最近はDAWソフトに付属のピーク・リミッターも優秀ですし、L1をマスター・チャンネルにインサートすることは少ないと言えます。ただ、その独特の歪み感がハマってくれる場合も多いので、ボーカル・チャンネルの最後にインサートして色づけ用のリミッターとして使う、というのがオススメです。個人的には音圧を稼ぐというよりもエフェクター的に音を変化させる用途で使うことが多いです。
L2 Ultramaximizer
L1の歪みっぽさを解消したのが、その後に発売されたL2。音圧を稼ぐのが流行った時期と重なったこともあり、ヒットしたプラグイン。思い返してみると、個人的にもこのL2が欲しくてWavesを買った記憶が…。当時は高かったデス。。
パラメーター的にはほとんどL1と変わりませんが、「ARC」が追加されたのがポイント。これはAuto Release Controlという機能で、素材に最適なリリース・タイムを自動で設定してくれる機能。Renaisance Compressorなどにも採用されている機能ですね。
サウンド的には、マキシマイズしてもL1よりもクリアな音に仕上げることができます。同時にサウンド変化もL1より抑えられているので、チャンネルやバス単位でインサートして使うことが多いように思います。
特に、かなりレベルを突っ込んだ(音圧の大きい)ミックスを作りたいときには、楽器の種類ごとにある程度バスでまとめ(ステム)、そこにL2をインサートして軽くリミッティングするようにすると、マスターだけにインサートするよりも違和感なくレベルが稼げます。
今はディスコンになってしまっていますが、L2にはハードウェア版もあったりします。何度か使ったことがありますが、個人的にはハード版の方が好きでした。
L3 Multimaximizer
L2のエンジンをベースに、マルチバンドのリミッティング処理を可能にしたのがL3 Multimaximizerです。
5バンドのマルチバンド・コンプレッサーはリニアフェイズなので、EQのようにサウンドを追い込んでいくことができます。また、面白いのが「Priority」というパラメーター。この数値が上手く設定できるかどうかによって、このプラグインの評価が大きく分かれると思います。
Priorityは、どの帯域を優先的に処理するのかを指定するパラメーターで、数値を上げることでその帯域のスレッショルドが上がる…という仕組み。通常のマルチバンド・コンプレッサーは潰したい帯域を選択するのが一般的ですが、Priorityはちょうど逆。ここを弄ることで“この帯域はあまり潰したくない…”とか、ある帯域でリミッターが引っかかってしまうのを防ぐことができます。
どのように設定するかはソースによって変わってきますが、デフォルトの設定だと、ロー・ミッドあたりですぐに引っかかることが多いので、少し上げ目に調整して上げるのがオススメ。主観ですが、エレクトロやダンス系の楽曲にマッチしてくれる印象です。
また、マルチバンド部分をカットしたのがL3 Ultramaximizerです。もしかしたら、下手にマルチバンドを弄るよりも、こちらの方が簡単で効果的なサウンドに仕上げられるかもしれません。
L3-LL Multimaximizer
L3のLow Latencyバージョンが、L3-LL Multimaximerです。
L3のプラグイン・レイテンシーは3,840@48kHz。トラックにインサートすると大変なことになってしまいますが、64@48kHzまで抑えたのがコレ(L1、L2も64@48kHz)。
のハズなんですが…。L3とはサウンドも別モノ。サウンド変化がL3よりも遙かに少なくて透明感もあり、かつレベルを突っ込める。そんな理由から、Lシリーズでもっとも好きなのがL3-LLです。逆に言うと、Lシリーズの中でもっとも使用頻度が少ないのがL3…。
こちらもマルチバンドを省略したL3-LL Ultramaximizerというバージョンも用意されています。
L3-16 Multimaximizer
Lシリーズの中でもっとも新しく、そして上位版として扱われているのがL3-16 Multimaximizerです。
その名の通り、L3の進化版で、マルチバンド処理できる帯域がL3の5バンドから16バンドへと拡張! その分音楽的に破綻しにくく、同じ設定でもレベルが稼げます。
ただ、実際に調整できるのは6バンドに限られており、その間のバンドは自動調整してくれるというインテリ仕様。バランスを保ったまま、クリアに仕上げることができます。
基本的な操作は、L3と同じです。
素敵なプラグインではありますが、難を言えば重くてレイテンシーも大きい(およそL3 Multimaximizerの倍)です。そのため、TDの最終段階やマスタリングなど、使用できるシーンは限られてきます。
Lシリーズを使うときに気を付けたいこと
Lシリーズはインサートしてちょっと弄るだけでバコっと音圧が上がってくれるので重宝しますが、使うときにはいくつか気を付けたいポイントがあると思います。
1.IDR
Lシリーズには、「IDR」というパラメーターがありますが、使い方によっては注意が必要です。
これはディザリングといって、24bitで作っていたプロジェクトを最終的に16bitに落とすときなど、ビットレート変化時の音質劣化を防ぐための機能。デジタルの信号はビット変換時に微量なノイズを発生させてしまうのですが、ディザを使うことで、あえてノイズを加えて目立たなくしよう、というもの。
つまり、ディザリングが必要なのはマスターの最終段に1つのみ。トラックにインサートしている場合や、Lシリーズの後に他のエフェクトを使う場合には「Dither」をOFFにして使うのがオススメです。デフォルトにONになっていますので、気を付けてみてください。
ちなみにType 1よりType 2の方が強力に掛かります。
2.音の変化に注意!
これはLシリーズに限ったことではなく、ピーク・リミッター/マキシマイザーと呼ばれるエフェクトに共通して言えることですが、掛けることで音圧は上がり、迫力が増したように聞こえるようになりますが、少なからず音質は変化してしまいます。
しっかりバランスを取ったMIXで、最後にLをインサートするとせっかく整えたバランスがぐちゃぐちゃ…ということになりかねません。
それを防ぐのにオススメなのが、ある程度トラックの音量バランスを整え終わった段階で、マスター段にマキシマイザーをインサートしてしまう方法。最初から音質が変わる前提でバランス調整ができるので、作業効率を大幅に向上させることができます。
書き出したファイルを別プロジェクトでマスタリングする場合にも、1つの目安になりますし、書き出すときにバイパスすればOKです。
音を比較してみました
ということで、実際に各プラグインの音を聞き比べてみました。
相変わらずサンプルは手抜きですが…。何もインサートしていない状態でマスター・フェーダーが-2dB程度になるようなバランスで、各製品ともThresholdを-6に固定、ディザはOFFにしています。
※違いが分かりやすいようにハデ目に使っています。通常、1段でここまで突っ込むことはあまりしません。
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