Tracktion / Waveform 8 レビュー
講師の鈴木です。
今回はレビューとしては初のDAWソフト! TracktionのWaveform 8 を紹介しようと思います。
元々MackieのTracktionという名前のソフトですよね。当時は国内でも一定のファンがいて定期的に耳にしていましたが、実際使うのは今回が初めて。ファースト・インプレッションを紹介していきます。動画も作りましたので、合わせて見て頂ければと。1本辺りの動画が長い! という意見がありましたので、今回は複数に分けてみました。
http://www.minet.jp/brand/tracktion/waveform/
とにかくシンプルで分かりやすい!
Waveformを触ってまず驚いたのが、そのシンプルさ。シンプルさを謳うソフトは他にもありますが、Waveformの場合は圧倒的にメニューやボタンが少ない!
基本的にはメイン画面で選んだ項目の詳細が、ページ下部に表示されるという仕組みで、メニューの類はありません。メニューがないので、フル画面で使っても違和感ゼロ! インターフェイス的にも、DAWソフトというよりアプリのイメージに近いのかな? というのが最初に見た感想。
また、トラック属性の考え方がないのもビックリです。通常であれば、トラック作成時にMIDIトラック、オーディオ・トラック、インストゥルメント・トラック…といった具合にトラックの種類を選んで作成しますが、Waveformにはそういった考えがなく、トラックに設定した入力ポートやクリップの種類に応じてMIDIトラック、オーディオ・トラックになるという。。
プラグインに関しても、シンセとエフェクトのスロットがなく、ただトラックにアサインするだけ…と、既存のDAWとはまったく違う考え方で、最初は凄く戸惑いましたが。
が、冷静に考えればこちらの方がスマートですよね(笑)。
基本的には、ウィンドウも1画面完結。画面は大きく分けて3つのセクションに分かれています。
1番上はトラックやタイムラインを管理するセクション。Waveformのメイン画面といっても良いと思います。
中段はミキサーやMIDIエディタ(ピアノロール)を表示するセクション。ミキサーは表示させる項目や表示サイズを変更することもできます。そしてピアノロールは独立したウィンドウとして表示もOK。
下段は選択したトラックやクリップに応じた編集メニューが表示されるセクションです。
インラインのピアノロール
ピアノロールに関しては、トラック上で直接編集することもできます。いわゆるインライン編集。
Pro Tools始め、あまりインラインのエディターに良いイメージがなかったのですが、Waveformの場合はMIDIエディタとまったく同じインターフェス、機能、操作感で、単にトラック内で開くか、別ウィンドウで開くかの違いしかないようです。
MIDIクリップにマウスを当てると、自動的にMIDI編集用のコマンドがリボンで表示されるというスマートな仕組みになっていて、使い勝手は中々良いと思います。
CCも書けたり、基本的な編集機能はカバーされていますが、やはり細かくデータを作り込もうと思うと不足感があるのが正直なところでしょうか…。とはいえ、その分シンプルなので、曲作りの初期段階でイメージをとりあえず形にしたい! というケースでは便利だと思いました。
あと、面白かったのがグルーブ・テンプレートの数。充実し過ぎ! ※画面はクリックで大きくなります。
作曲支援機能が便利!
Waveformが話題になっている大きな理由が、作曲支援機能が充実している点だと思いますが、これは良い意味で裏切られました。
というのも、作曲支援機能と言われる機能を持ったソフトもありますが、大体が実際に使うには”それありき”で帳尻を合わせながら作る必要があったり、最初から自分でやった方が自由で早いというイメージを持っていました。
が、Waveformの場合はあくまで「支援」してくれるだけで、ユーザー側に十分な余地を残してくれるので、純粋に便利なツールの1つとして使えるというのが印象です。
色々な支援機能があるのですが、1番分かりやすいのがコード進行作りをサポートしてくれる機能です。
MIDIクリップを選択した状態で、画面下部から「パターン・ジェネレーター」を選ぶと使用できるのですが、画面内の「プログレッション」でコードを1つ選ぶと、その次にマッチするコードのディグリー・ネームが「提案」として表示される仕組み。理論的にマッチする順に表示してくれるので、この中から適当なものを選んでいくだけで、理論的に破綻することのないコード進行が作れます。
また、コード進行自体もプリセットされているので、それを選べば一発で「よくある進行」を作るコトも。もちろんプリセットをカスタマイズすることもできるので、コードベースで曲を作りたい場合は重宝すると思います。
なお、コードはすべてディグリー・ネームで表示されており、設定しているキーにマッチするコードが自動で配置される仕組みです。
この機能のポイントは、コードに準じたMIDIデータを勝手に作ってくれるという点。つまり、打ち込みをしなくてもいい! このデータをそのまま使うということはないと思いますが、コードの変更がワンクリックで行えるので、メロディーにコードを付ける作業のときに簡単に違うコードを試せるのは便利ではないでしょうか??
また、シーケンスのパターンをプリセット化した「コード・プリセット」も便利。
パターン・スタイルを変えればアルペジオやベースのラインを作ることもできます。
Melodyneを統合
また、CelemonyのMelodyne Essentialをバンドル(画面はEditorです)。ARAにも対応しているので、Waveform上のオーディオ・クリップをダイレクトにMelodyneでエディットすることができます。
基本的にはSONARやStudio Oneと同じ感じで使えます。
つまり、オーディオのピッチとタイミングを検出してMIDIデータとして直接トラックに出力可能。事実上、オーディオからMIDIデータを生成することができます。付属のMelodyne Essentialの場合はモノフォニックのみの対応です。
付属プラグイン
付属プラグイン類は、必要最小限といったところでしょうか。詳しい内容はメーカーのHPでご確認頂きたいと思いますが、3つのグレードのうち、1番ベーシックなものにはエフェクト類は収録されません。
ソフト自体のお値段も安いので、これは仕方のないことだと思いますし、ある程度サードパーティーのプラグインを買い始めちゃうと、付属プラグインは不要になるので、あまり意識するところでもないと思いますが。
音源はヒット。Collectiveは600以上のサウンドを収録したマルチ音源なのですが、音色がハードウェア音源の質感に近いというか、ソフトっぽくない質感で重宝すると思います。
また、上位版の「Waveform Ultimate」というバージョンには、「BioTek」という音源がバンドルされるのですが、これもかなり面白いシンセ。良い意味で変態的というか、アンビだったりEDMのフックになるようなサウンドが簡単に出せますので、ハマる人にはかなりハマる音源だと思います。
まとめ
DAWソフトということもあり、かなり長くなってしまいましたので、今回はこの辺りで終わりにしようと思いますが、一度試す価値のあるDAWソフトだと思います。
すでに主要DAWからのスイッチ… というのは正直ないと思いますが、サブとして曲のモチーフを作ったり、イメージをパッと形にするという視点では、既存DAWより優れている部分が沢山あります。
個人的な印象ですが、バンド系よりもダンスミュージックだったりループを主体とした曲作りに向いているかなぁと。もちろんバンドモノができない訳ではありませんが…。
ぜひ、一度試してみて下さい!
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