Roland / TR-8S レビュー
講師の鈴木(@dawlesson)です。
曲作りだけで利便性を考えると、ソフト音源が最高に便利な訳ですが、やっぱりハード音源も気になりますよね!?。 ハードというだけで、何となく“ソフトより音が良さそう“なんてイメージを持ってしまいますが、個人的にも発表されてからずっと気になっていたRolandのTR-8Sをガッツリ触ることができたので、レビューという形で紹介してみようと思います。
ただ、私自身はトラックメイカーやDJではありませんし、TRシリーズについては他に詳しい方が沢山いると思いますので、パフォーマンス・ツールとしてではなく、あくまでDAWと組み合わせて使うという曲作り/アレンジの側面から見ていきます。
ACBで歴代TRサウンドを再現!
TRシリーズと言えば、言わずもしれたローランドが誇るリズム・マシンの名機。特にTR-808(ヤオヤ)やTR-909のサウンドは(それをベースにした音を含めて)毎日どこかしらで耳にするほど定番中の定番ですよね。
このTR-8Sには、そんな歴代TRシリーズ+αのサウンドが満載されています。
といっても、単なるサンプリングではなくACBというモデリング技術で再構築されたアナログ・モデリング・エンジンがベースになっており、パラメーターを動かしたときの挙動まで完全に再現されているということです。
これは完全に余談ですが「ACBエンジン」と発音すると、かなりのタイミングでSiriが起動します(笑)。
TR-8Sは、キックやスネアといった各音色のことを「トーン」と呼び、11のINSTに割り当てていきます。そして11のINSTの組み合わせを「キット」と読んでいます… と、あえて分かりにくい表現をしてみましたが、11のINSTに割り当てるトーンは自由に変更ができます。
普通に使う分には、BDのINSTにはキック、SDにはスネアを割り当てていくのが原則ですが、KITすべてにキックのバリエーションを配置して…なんて使い方も曲作り的にはアリなのかなぁ、と。
また、従来モデルからTR-8Sの進化点として、SDカード経由でオリジナルのサンプル(Wav/Aiff)をインポートすることができるのですが、これがかなり便利だと思いました。TRのサウンドを加工したもの等、単体だけでは作れないサウンドが使えるので、柔軟性という意味では実機より遙かに便利です。
つまみで音作りできるのは、本当に楽しい!
気になるサウンド面については、やはりハード音源はハード音源の良さがあります。音を言葉で表現するのは難しいので、詳しくは動画の後半でNative InstrumentsのBATERRYの標準ライブラリと聴き比べをしているので、そちらで見ていただきたいと思いますが、ひと言で言えば、「スピードが早くて音のアタックがちゃんと出ている」という感じでしょうか。
輪郭がハッキリとしているので、音量変化で奥行きが付けやすいです。逆に言えば、ソフト音源が全体的に平べったい音になってしまうのは、こういう部分が関係しているのかなぁ、と。
とは言っても、この辺りは好みによる部分が大きいですし、作る曲によっては“あえてノッペリ“してくれた方が良い場合もあるので、無条件にソフトはダメでハードは優秀。なんて考えはまったくありません。
何より、つまみを使って有機的に音作りができるのが一番楽しく、そして便利でした。
各INSTごとに、「TUNE」、「DECAY」そして任意のパラメーターをアサインも可能な「CTRL」とボリューム・スライダーが用意されており、リアルタイムに音作りができます。
ここで、TR-8Sがサンプリングではなく、モデリングという部分が効いてくるのですが、各パラメーターを動かしたときのニュアンスが、しっかりTR(実機)っぽいんです。もちろんピッチやディケイはサンプリング音源でも変えられますが、あくまでサンプルの「音程」や「長さ」が変わるだけ。しかし、TRの場合は「音色」が変わるんです。
サンプルは、実機の「特定のポイント」でサンプリングした素材をベースに加工していきますので、違うトーンが欲しければ違うサンプルを選ぶしかありません。つまり、“点“で音を選んでいく感じですが、モデリングのTR-8Sの場合は、それがリニアに変化しますので、曲の雰囲気にベストな欲しいサウンドをピンポイントで作ることができます。
個人的には、曲作りにおいては、ソフトとハードのサウンドの違いより、こちらの方が遙かに重要なファクターだと感じました。
パソコンやDAWとの連携
パソコンとの接続は、USBもしくはMIDI(IN/OUT)で行えます。各INSTのキー配列はGMに準拠しているので、打ち込みもしやすいと思います。
MIDIコントローラーとして使えたり、TR-8Sの内蔵シーケンサーもCCが出るのでDAWとの同期も可能。ちなみにUSB接続時にはUSB-AUDIOでパラアウトも使用できたりと、パソコンとの連携もしっかり考えられています。
背面パネルには、メインの2系統に加えて6系統のアサイナブル出力端子が搭載されていますので、アナログで8パラ出力も可能です。これも制作の人間としてはありがたいですね!
ちなみにLEDのカラーをカスタマイズできたりもしますが、暗くするとこんな感じです。
カッコ良いですね(笑)。所有欲を満たしてくれるのも、やっぱりハードならではですね。
個人的には、正直“音”だけで考えるならばサンプルで十分だと思います。ですが、音作りの柔軟性や内蔵シーケンサーTR RECを組み合わせてビートを作りたい。なんて方には、かなり面白く、ワクワクできる機材ではないでしょうか?
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