Spectraonics / Keyscape レビュー
講師の鈴木です。
今回はSpectrasonicsのキーボード音源「Keyscape」を紹介します。
発売されたのは少し前ですし、大きなタイトルなので色々なところですでにレビューされていると思うのですが、凄く良い音源だったのでどうしてもやっておきたくて…。簡単なオーディオ・サンプルも作ってみました。
http://www.minet.jp/brand/spectrasonics/keyscape/
36のキーボードを収録
Keyscapeに収録されているキーボードは36モデル。昨今の大容量が当たり前の音源に慣れてしまうと、少なくすら感じてしまいがちですが、そのモデルを使ったパッチは450、サウンド・ソースは179で合計629種類とかなりの容量です。
収録モデルの詳細はオフィシャルHPでご確認頂きたいと思いますが、定番どころからマニアックな部分まで網羅されています。例えばアコピはYAMAHAのC7。エレピにはローズ、ヴィンテージ・ヴァイブ、ウーリッツァーからCPまで。個人的にはトイ・ピアノやチェレスタが収録されているのが嬉しかったです。使用頻度は決して高いとは言えませんが、その分使える音源も少ないので…。
ポピュラー的な楽器カテゴリーだと、「キーボード」にはオルガンなども含まれると思いますが、構成内容的には、エレクトリック・ピアノ音源で、ボーナスとしてアコースティック・ピアノ系も付いてくる。みたいなイメージでしょうか。。
なお、2つのモデルを組み合わせた「DUO」パッチもいくつか収録されています。
インターフェイスは超シンプル
Spectrasonicsのインストゥルメントは、かなりマニアックなエディットができる製品が多いですが、Keyscapeに至ってはシンプル。画面右側に音色ブラウザ、中央下部にエディット用のパラメーターが用意されているだけ。
Omnisphereに比べると楽器モデルも少ないですし、プリセットも限られているので音色ブラウザがオーバーレイするようなこともありません。また、マルチで音をレイヤーするような使い方も希なので、レイヤー構造もありません。
ページ下部のエディット画面ですが、これは読み込んだインストゥルメント・モデルによってパラメーターが変わる仕様。ピアノならサウンド・キャラクターが選べたり、アンプで鳴らすようなパッチであれば歪み具合だったり…といった具合です。
サウンド・サンプル
ここで、使用頻度が高いであろうモデルを、サウンドと共に紹介します。
LA Custom C7
まずはド定番のピアノ音色。モデルになっているのは、YAMAHAのコンサート・グランドC7。定番のモデルですが、ただのC7ではなくカスタムが行われているとのこと。C7の音…というかヤマハの音は軽くてあまり好みじゃないなーと思っていたのですが、コレはローミッドもしっかりしていて大好きな音でした(笑)。 サンプルは「LA Custom C7 Natural」というパッチで、EQで軽く低域をカットしています。
Rhodes – classic mark I
その名の通り、ローズのマークI。これも鉄板でジャンルを問わずに使える音色です。濃厚な質感と、リリース時に入るメカニカル・ノイズが弾いていて気持ち良いです。サンプルは1番オーソドックスな「Rhodes -classic」というパッチで、その他にもトレモロが掛かったパッチや、Fenderのアンプでドライブさせたものも。歪みはモデリングのようなのですが、かなりイイ感じで再現されています。
Rhodes – LA Custom “E”
同じくローズですが”E”Customというタイプ。初めて聞いたモデルですが、ローズよりも軽めでコロコロしていて、歌の邪魔にならないので歌モノのバックに良さそうな印象。揺れ系のエフェクトを深めにかけても、かなり気持ち良いです。サンプルは1番オーソドックスな「Rhodes – LA Custom」というパッチです。
Wurlitzer 200A
ローズと並んでエレピの定番、ウーリッツァーのA200。自分自身、あまりウーリッツァーの音色を使うことはないのですが、定番だろうということで…。ミッドの潰れた感じが弾いていて気持ち良かったので、フレージング含めて今後勉強していきたいな、と。サンプルは「Wurlitzer 200A」というマンマのパッチです。
Keyscapeの凄さは弾かないと分からない
これまで色々なソフトウェア・インストゥルメントを触ってきましたが、久しぶりに「これは凄い!」と思わせてくれる音源だと思います。
発売前に公開されたテザー動画は、確かに「質感はいいなー」と思ったのですが、キーボード音源自体は決して珍しくありませんし、正直80GB近いハードディスク容量を費やしてまで必要かな…と思っていました。これが発売してすぐに手に入れなかった理由です(笑)。
ですが、実際に自分で弾いてみたところ、1音出してすぐにKeyscapeのヤバさに気付きました。めちゃくちゃ気持ち良いんです。
今までのサンプル音源の場合…たとえばSynthogyのIvory2なんかは、音色は凄くリアルなんですが、どうしても鍵盤を弾くとMIDIデータでサンプルがトリガーされている感がありました。言葉で表現するのが難しいのですが、「弾いている」というよりは「鳴っている」という受動的な感覚です。良い悪いとかではなく、サンプル音源ってそういうモノだと思っていましたので、特別な違和感はありませんでした。
しかし、Keyscapeは楽器を弾いている感じにさせてくれます。例えばピアノなら、鍵盤を弾くとその先でハンマーが弦を叩いているアクションが想像できますし、ローズ系のエレピ系なら音叉を、ウーリッツァーならリードを叩いている感覚を味わえます。もちろん、そんな訳がないのですが、そういった「弾き心地」の良さがKeyscapeの1番の魅力だと思っています。
音色だけでも十分凄いのですが、Keyscapeの本当のヤバさはwebじゃ絶対に分からないものだと思います。
鍵盤が弾ける/弾けないに関わらず、MIDIキーボードを弾くだけで従来のサンプリング音源との違いを感じられるはずです。
優秀なストリーミング・エンジンで、読み込み時間もほぼ無し!
大容量系ライブラリでストレスになるのが、音色の読み込み時間。特に音色の選定をするときに、音が出るまで何十秒も待たされる…というのはヤル気がそがれますよね…。Keyscapeもソコが気になっていたのですが、実際使ってみると一切ストレスなく使えました。
KeyscapeのライブラリはOmnisphereやTrilianと同じSTEMエンジンで動作するため、すべて同じフォルダにインストールする必要があります。もしOmnisphereなどを持っている場合、3製品で180GB近い容量が必要となります。パフォーマンスを考えるとSSDがオススメなのは間違いないのですが、試しにHDDにインストールしてみました。
結果、個人的にはHDDでもOKかと。OmnisphereやTrilianの「Preview Load」が自動でオンになっている状態なので、パッチを読み込むと、まずプレビューが読み込まれるのでほとんどタイムラグなく音が出るようになります。Preview Loadと違い、そのまま裏でフル・パッチを読み込みますので、知らぬ間に読み込みが終わってる状態です。
Keyscapeを使うコツ
コツという程ではありませんが、Keyscapeを気持ち良く演奏するには、いくつかのポイントがあります。
まず1番大きいのは、使っているMIDIキーボードに合わせたベロシティ・カーブを設定するということ。カーブの設定は「SETTING」タブ内で行うことができます。
カーブは自分でも設定できますが、各社の主要なモデルにはプリセットが用意されているので、それを使うのが1番。現行モデルが中心ですが、使っているモデルがない場合も似た構成のモデルを選んで微調整していくと良いと思います。
いわゆるMIDIキーボードは、かなりタッチが軽く弱いベロシティが出せないので、この設定を行わないとKeyscapeのうま味を引き出すことができません。
一度選択すれば、次回以降はプラグイン起動時に自動的に同じ設定をリコールしてくれます。
また、Spectrasonicsの音源全体的に言えることですが、とにかく低域が出過ぎるのでEQ必須。単体で弾くとめちゃくちゃ気持ち良いのですが、オケに入れると間違いなくダンゴになります。Keyscape内にもEQがありますが、音作り(トーン)的な意味合いが強い感じなので、DAWソフト上でEQをインサートした方が早いと思います。
Omnisphereとの連携
Keyscapeのライブラリは、Onnisphare 2で読み込むこともできます。
単純にOmnisphere内でKeyscapeの画面を表示することもできますが、ライブラリをサウンド・ソースとしてOmnisphereのエンジンに読み込み、シンセ的なエディットを行ったり、他のライブラリとレイヤーさせる…といった使い方もOKです。
色々な音源のピアノ音色を聞き比べてみた
Keyscapeのサウンドがイイ感じだったので、ふと他の音源と聞き比べてみたくなりまして…。
以下の音源のピアノ音色を比べてみました。オーディオ・ファイルもアップしているので、ぜひ覗いてみて下さい。
■9つの音源のピアノ音色を比較してみました!
https://dawlesson.net/technique/2016_piano_comparison/
<比較対象>
・Modart / Pianoteq
・MOTU / MachFive
・Native Instruments / KONTAKT
・Native Instruments / THE GRANDEUR
・Roland / INTEGRA-7
・Spectrasonics / Keyscape
・Synthogy / Ivory 2
・XLN Audio / AddictiveKeys
・YAMAHA / MOTIF XS
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