Eventide / UltraChannel レビュー
講師の鈴木です。
先日のレッスンで「これ、どうなんですか!?」と紹介された、EventideのUltraChannel。通常$249らしいのですが、どうやら7月8日までの期間限定で無料配布中! ということで話題になっているみたいですね。存在は知っていたのですが、使ったことがなかったので、早速インストールして試してみました。
なお、UltraChannelはAudio Units、AAX、VSTの各フォーマットに対応しています。
【UltraChannelの入手方法】
http://eventideplugins.elasticbeanstalk.com/ultrachannel.jsp
・上記URLにアクセスし、アクセス・コードとiLokアカウントなどを登録すると、メールでダウンロード先のURLが送られてきます。
・iLok自体は不要ですが、iLokアカウントとiLok License Managerという管理ソフト(いずれも無料)が必要です。
・アクセス・コードはhttp://www.eventide.com/News/Product%20News/UltraChannel.aspx←このページの中に書かれています。直接書いていいものか分からなかったので、一応。。
基本構成
UltraChannelは、チャンネル・ストリップ形式のプラグイン。つまり、EQやコンプといった複数のエフェクトが1つにまとまったタイプのエフェクトです。WavesのSSL 4000シリーズなどと同じ感じですね。
モジュールとしては、GATE、COMPRESSOR、O-PRESSOR、5バンドのパラメトリックEQ、MICRO PITCH SHIFT、STREO DELAYと、6つのプロセッサーから構成され、それぞれON/OFFが可能です。いくつか聞き慣れないものが混じっていると思いますが、追々見ていくとしてピッチ・シフトやディレイが入っているのがEventideらしいところでしょうか。
信号は左から右に流れていきますが、各プロセッサーをドラッグ&ドロップすることでルーティングを変更することができます(マウスで掴むと赤枠で囲まれ、変更先が左図のように赤ラインで表示されます)。
FlexiPath機能というようですが、ボタンでルーティングの変わるSSLやNeveのエミュレーターよりも直感的に使えますね。
INPUT
入力段では、-60〜12dBの範囲でレベル調整が可能です。まぁ、通常はあまり弄らないセクションです…。Phaseスイッチはマイク録りした素材を扱うときに便利かと。
GATE
一般的なGATEと同じく、Threshold(ここで設定した以上の音量はゲートが閉じます)、Release(ゲートが閉じる時間)のパラメーターが用意されていますが、入力レベルを見ながらThresoldスライダーを操作できるので、”この位かな”という調整が視覚的に行えます。
ゲート自体もしっかり掛かってくれますし、かなり使いやすいですね!
また、ゲートは「サイドチェイン」ボタンをONにすることで、外部ソースでトリガーすることもできます。
例えば、ダンス系の楽曲でキックにサブ・ベースを足したい! なんてケースで活用できます。 ロング・ノートで鳴らし続けているベースのトラックにGATEを掛け、サイドチェインでキックのトラックを指定することで、キックが鳴っているときだけサブ・ベースが鳴るようになります。
AUとAAXは問題ないのですが、VSTフォーマットだと規格上サイドチェインはできないかも…です。
COMPRESSOR
コンプレッサーも非常にシンプル。ThresholdやRatio(1:1〜20:1)、Attack(0.1〜50msec)、Release(1〜500msec)といったお馴染みのパラメーターと、Kneeの調整も可能です。GATE同様にサイド・チェインが利用可能で、インプットとGRのレベル・メーターが付いているので直感的に操作できます。
また「SAT」ボタンをONにすればソフト・サチュレーターが掛かり、少しまろやかなサウンド・キャラクターを作ることが可能。そしてDeEsserも内蔵し、4-9kHzの範囲で周波数を微調整可能です。
コンプレッサーとしては非常にしっかりと効いてくれ、デジタル的なハッキリとしたサウンドは、汎用性が高そうです。
O-Pressor
O-Pressorというのは、EventideのOmnipressorというモデルで採用されていたコンプレッサー・セクションを抜き出したもの。
Omnipressorはコンプだけでなくノイズゲートや逆エクスパンダーとしても使えたハードウェアで、現在は復刻版のプラグインも発売されています。
Compressorが優等生的なサウンドだったのに対し、こちらは攻撃的。Ratioは100:1まで設定できます。まったくキャラクターの方向性が違い、ガッツリ潰すと何とも言えないコンプ感。
また、BASS CUTを使えばコンプレッサー回路にフィルターを入れることができます。キックやベースなどではBASS CUTを入れると低域を保ったまま深くコンプを掛けることができるので、深くコンプを掛けてもしっかりとしたボトムを保つことができます。
EQ
5バンドのパラメトリックEQセクションは、シンプルながら多彩な音作りが可能です。
EQポイントやゲインはグラフ上を直接マウスで操作できますし、各帯域ごとに以下のようなFilter Typeを設定することができます。
【Low】
・6 dB/Oct Low Cut
・12 dB/Oct Low Cut
・Low Shelf
・Classic Peak
・Modern Peak
【Low Mid / Mid / High Mid】
・Classic Peak
・Modern Peak
【High】
・6 dB/Oct High Cut
・12 dB/Oct High Cut
・High Shelf
・Classic Peak
・Modern Peak
すべてのバンドに付いている「Classic Peak」と「Modern Peak」の違いですが、Classic Peakはゲイン値に関わらず一定のカーブになるのに対し、Modernタイプではカット時にカーブが狭くなります。
Filter Typeを切り替えると、画面上のグラフィックも変わってくれるので分かりやすいですね。
Micro Pitch Shift
UltraChannelが面白いのはここから。Micro Pitch Shiftは、サウンドのステレオ感を広げたり、空間を与えることができるエフェクト。
仕組みとしてはピッチ・シフトとショート・ディレイを組み合わせるというシンプルなものですが、この辺りはまさにEventideのお家芸。
パラメーターは、ピッチシフト量を調整する「SIZE」、モノ-ステレオの広がり具合を調整する「WIDTH」、ディレイ量を調整する「DEPTH」、原音とのミックス・バランスを変える「Mix」とシンプルですが、他のエフェクトとは違ったユニークな効果を得ることができます。
コーラス・パートを広げるといった王道の使い方から、エレピやギターのアルペジオ、ループ素材などに使っても効果的です。音を簡単に前に持ってくることもできるので、メイン・ボーカルの隠し味に使ってみたり…と色々試してみると面白いと思います。
ちなみに、このMicro Pitch ShiftとStreo DelayはEQやコンプ、Gateの後段に並列でルーティングされるようです。
Stereo Delays
その名の通りのステレオ・ディレイで、ディレイ・タイムを手動で設定するのはもちろん、ホストのDAWに同期させることもできます。
基本的には非常にオーソドックスなディレイですが、面白いのがEQやGATEといった各モジュールにフィードバックさせることができる点です。フィードバックは、ディレイを通った(出力の)音を入力に戻す…というディレイの基本的な回路ですが、EQやコンプにフィードバックさせることで面白い効果を作ることもできます。
ただし、設定によってはハウリングすることもあるので注意、、です。
Output
最終段のアウトプットは、最終的な音量を調整する… だけでなく、「XFORMER」ボタンをONにすることで、トランスを通したときのサウンドをシミュレートすることができます。
具体的には、このボタンをONにすることで音の押し出し感が増す印象です。コンプ段のサチュレーションもそうですが、ONにしたからといって劇的に音が変わる訳ではありませんが、ほんの少し色づけしたい…なんて場合は有効だと思います。
まとめ
駆け足で見てきましたが、一通り触ってみて「これ、いいな…」と。UltraChannelでしか作れない音がある訳ではないのですが、各モジュールが全体的に使いやすく、手堅く平均点の高いイメージです。
チャンネル・ストリップとしてはもちろんですが、他に代えのききにくいMicro Pitch Shiftだけ使ったり、、と使用するシーンを選ばないので盛っておいて絶対に損はないと思いました。
また、プリセットも楽器ごとにたくさん用意されているので、これを切り替えるだけでも全然OKという感じすらありますね。。
※小ネタ:パラメーターをダブル・クリックすれば初期値に戻ります。
このプラグインが(今だけ)無料で貰えるというのは、かなり太っ腹。今回はあえてサンプルを作りませんでしたので、ぜひ試してみて下さいね!