SPL / 2Control Model 2860 レビュー
講師の鈴木です。
今回はSPLのモニター・コントローラー Model 2860 2Controlを紹介します。
価格レンジ的にも割とメジャーな製品だと思いますが、意外と情報ないようなので。音に直結する大切な部分なので、今回は厳しめ意見でレビューしていきます。最後には、これまで使った他社製品との比較も。
http://www.electori.co.jp/spl/2control.htm
モニター・コントローラーを使う意味
そもそも、モニター・コントローラーなんて何に使うの? なんて方も多いと思います。そうですよね。オーディオ・インターフェイスから直接スピーカーつなぐのが1番素直ですから。
このような機材が使われるようになった背景には、やはりDAWの普及でコンソール(ミキサー)を使わないスタジオが増えたことがあるかと。スピーカーの音量調整や切り替え機能は、コンソールには必ず付いている機能ですが、コンソールが無くなったことで、スピーカー・マネージメントを別の機材でまかなう必要があった、と。
モニター・コントローラーの役割としては、
・音量が手元でコントロールできる
・スピーカーの切り替えができる
・モニター・ソースの切り替えができる
この辺りでしょうか。
どこで音量を絞るか
音量なんてDAWソフトのマスター、オーディオ・インターフェイスの出力つまみや、スピーカーのインプット・トリムで調整すればいいじゃん!
確かにそれが1番シンプルですが、まずスピーカーのトリムは、原則として固定して使うのがオススメです。ボリュームがフロント・パネルに付いているモデルもあると思いますが、固定して使うことで、左右のボリュームがずれるという危険性を回避することができます。
また、スピーカー側であまり音量を絞ってしまうと、(アンプのゲインが低くなりすぎて)スピーカーの性能が活かしきれない…という可能性があるのも考慮すべきポイントだと思います。ですので、ユニティーで使うのが精神衛生上も良いかと。
次にDAWソフトのマスターやオーディオ・インターフェイス側で絞る方法ですが、デジタルで音量を絞る=ビットをフルに活かせない(これをビット落ち、なんて呼びます)というリスクがあります。
リスク…なんて書きましたが、著しく小さいレベルに絞らない限りは、そこまで目くじら立てる必要はないと思いますし、そもそもモニター・コントローラーを入れるということも余計な回路を通すということに他なりませんので、音(もちろん大切ですが)よりも利便性を求める機材だと思います。
今使っているDAがラック式であること、そして専用のボリュームつまみがついていない…といった理由でモニター・コントローラーを使っています。
シンプルで必要十分。
前置きが長くなりましたが、これが2Controlの印象です。
基本仕様としては、インプット・ソースが2系統。モニター出力はステレオ2系統に加え、サブウーファーなどを接続するためのモノ出力。各スピーカー出力間のキャリブレートはできず、本体中央のボリューム・ノブでコントロールするだけ、と非常にシンプル。
なお、IN2は+4/-10dBの切り替えができるので、iPhoneなどを繋いで使うこともあります。
一時的に出力をモノラル化するMONOや、-15dB音量を下げるDIMといったモニター・コントローラーに必須の機能も搭載しています。
このページの最初の写真にもある通り、入力と出力はラッチではないので、2つの入力をミックスしてスピーカーに出力する、といった使い方もOK。これも便利な仕様です。
本体はアルミ。ノブやボタンもしっかりしていて、かなり高級感のある質感です。
気になる音質は…
DAとスピーカーの間に接続する機器ですから、何より重要なのが音。音が劣化してしまったら元も子もありませんから。厳しめ意見でお送りします。
前提として、モニター・コントローラーという余計な機材を通すのですから、音の変化がないということはあり得ません。これは2Controlでも同じなのですが、他のブランドの安価なモデルに比べて解像度の落ち込みが少なく、かなり優秀。2Controlに買い換えて初めて音を出したときは、あまりの違いに笑っちゃった記憶があります(詳しくは後ほど)。
サウンドの傾向としては、基本的にナチュラルですが、どちらかと言うとウォームなアナログ感が付加されるような印象で、安価な製品に感じるような”明らかに削られている感”はありません。全然許容範囲。
今使っているスピーカーが、中々パワフルなアンプを搭載しているので、12時の位置(目盛表記は-8dB)あたりで使っていますが、ボリュームの位置によるサウンドの違いも、ほとんど気にならなりません。
とまぁ、この価格なら大満足! この上になると、Graceのm905やCrane SongのAvocetになっちゃいますし。
ヘッドホン・アンプとしての実力
2Controlには、2系統の独立したヘッドホン・アンプも付いています。
専用のアンプを積んでいる、ということで、下手なオーディオ・インターフェイスのヘッドホン出力も良い感じに鳴ってくれるはず。SP出力よりも、味付けが強めな印象もありますが、どっしりとしたキャラクターは気持ち良く作業できると思います。
ヘッドホンのボリュームだけは、ステップ式になっています。
また、Crossfeedというユニークな機能も。これは、クロストークが増えたような、ヘッドホンでもスピーカーのような聞こえ方をシミュレートする…という機能。つまみを上げるほど、音が中央に寄ってモノラルが強くなります。
こう言ってはアレですが、普段使うような機能ではないかなぁと。
モニター・コントローラー遍歴
2Controlが気になっているという方は、やはり他のモニター・コントローラーとの音の違いがどこにあるのか、という点が1番気になる部分だと思います。ですが、個々の情報はあっても、他社製品との比較というのはあまり見たことがなかったので、これまで所有したことのある/(自分の環境で)試したことのあるモデルの特徴と、印象についてまとめておきます。
Mackie / Big Knob
モニター・コントローラーの代名詞として大ヒットしたモデルですね! 最初に手に入れたのもコレ。音は、色々なところで言われている通りMackie! という感じ。マッチョで解像度も低め。ですが、各モニターのキャリブレーションが出来たり、インプットの音量も細かく調整できたりと必要なものが一通り揃っていて、便利でした。
そんなBig Knob、遂にモデル・チェンジするみたいですね。
PreSonus / Monitor Station
次に手に入れたのがPreSonusのMonitor Statio。現在は黒いV2になっていますが、使っていたのは初期モデルです。BigKnobより奥行きがあって、使いやすいかなーというのと、価格も手ごろ。さらにメーターのキャリブレーションができたり、4系統のヘッドホンは端子毎にメインとCUEが選べたり、ディム・レベルまで調節できる! と機能的には文句なし。
音的には、Mackieと比べるとクリアですが、全体的に軽くてのっぺりとした印象。これはPreSonsu製品全体に言える傾向だと思いますが…。
PreSonus / Central Station PLUS
Monitor Stationの音ヤセ感が気になり、上位版なら大丈夫じゃね? と次に手を出したのがコレ。プロジェクト・スタジオでもよく見かけるCentral Stationです。本体でもフル・コントロールできますが、PLUSはトークバックまで使用可能なリモコンのCSR-1が同梱されています。
見た目も良くて、CSR-1を使えば本体をラックに入れられる。つまり、手元にケーブルがごちゃごちゃしない! というのが最高に便利でした。ですが、キュー出力がなぜか逆相だったり(ロットによるみたいです)、中々厄介な機材でもありました。便利なんですけどね。
あとパッシブ回路で色づけや歪みがない、というのがウリでしたが、イイ感じで音ヤセは生じます。過去2つのモデルに比べるとマシですし、特性上レベルを落とせば落とすほど痩せていくので、なるべく音量を絞らないで使うのがポイントだと思います。
回路はリレーが使われていて、インプットやスピーカーを切り替えると「カチッ」とイイ感じの音がしてくれたり、DAも2系統搭載。DAに関しては、過度な期待は危険です…。総合的に見るとめちゃくちゃコスパが高い製品だと思います。テンション上がる機材ではありますが、反面で音を気にするなら2Controlの圧勝かと。と言いつつ、1番長い期間使ってた機材です(笑)。
あるとき、モニター・コントローラーを外して直接スピーカーに繋ぐことがありました。その音のみずみずしさったら…。これが買い換えのきっかけでした。
モニコン機能内蔵のインターフェイス
と、専用機を中心にお話してきましたが、最近はオーディオ・インターフェイスの機能の1つとして搭載されているケースも増えてきましたね。
ただ、多くのモデルはボリュームがDA後にアナログ・コントロールするのではなく、デジタル段で絞っているケースが多いようなので、その点は知っておく必要があるかもしれません。
RMEなんかは、コントロール・ソフトのTotal mix上に2系統のモニター・コントローラ機能が付いていたりしますし、かなり便利。最近発売されたARC USBというコントローラーを使うと、USB経由でリモート操作できるみたいです。Babyfaceみたいですね。一度触ってみたい。。。
まとめ
今回は、2Controlからモニター・コントローラー全体まで話が広がってしまいましたが、個人的にはモニター・コントローラーは必須の機材。多少音が劣化しようとも、利便性優先で使い続けていくと思います。
最後に。モニター・コントローラーは基本的にアナログ機材なので、性能は価格に比例します。あまりに安いモデルは注意が必要かも…です。
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