VoosteQ Model N Channelをレビュー ~ Neve サウンドの魅力満載のプラグイン
講師の鈴木です。
今回はVoosteQの新作プラグイン「Model N Channel」を紹介します!
VoosteQといえば、前作 Material Compも大ヒットした国産のプラグイン・メーカー。その第二弾がNeve系ということで、どうしても気になってしまいますよね…。今回はVoosteQさんにライセンスを提供していただいたので、どんなプラグインになっているのか、早速みてみましょう!
英国製コンソールのサウンドをシミュレート
Model N Channelは、その名の通り英国製…Neveのプリアンプ、コンプレッサー、EQ、トランスのサウンドを再現するプラグインです。
各セクションごとに個別にON / OFFすることもできるので、EQだけ使いたい。とかプリアンプのキャラクターだけ欲しい…なんて使い方もOKです。
Neve系のプラグインは色々なメーカーからリリースされていますが、Model N Channelの大きな特徴が、各セクション単体ではなく、コンソールとそこにつながるケーブルやパッチベイ、AD/DAといったスタジオのルーティングそのままのサウンドを再現しているという点です。パッと見はチャンネルストリップのようにも見えますが、この仕様もそうですし、実際に触っていくといわゆるチャンネル・ストリップとは少し違った印象を持ちます。
これがどう影響するかは、後ほど紹介するとして…各セクションはタイプ切り替えで複数のキャラクターを使い分けられるようになっていたり(しかもGUIも変化!)とロマン満載。見た目もカッコ良いので目と耳の両方で楽しめるような仕様になっています!
プリアンプ・セクション
プリアンプ・セクションでは、3タイプのキャラクターを選べるようになっています。マニュアルの該当箇所を抜粋してみると…
・84
70年代のヴィンテージの個体のモデリング。
オリジナルの実機に存在した癖のある中低域も含め忠実にモデリングしたタイプ。
ドラムやベースを歪ませるのにも適しています。・31
80年代のヴィンテージの個体のモデリング。
“84”より中音域に特徴があり、暗めの質感です。比較的アタックの少ないボーカルやギターに向いています。・Mod
VoosteQ Model N Channel User Guideより
近年リリースされたプリアンプのモデリング。
“84”や “32”と比べてフラットの周波数特性で、歪みの質感も癖が少ないタイプ。ピアノやシンセ、ストリングスなどさまざまな楽器に適しています。
基本的にはマニュアル通りの印象です! いわゆるNeve感を一番強く感じるのは「84」だと思いますが、基本的なサウンドキャラクターは似ているのでお好みで…という感じでしょうか。
プリアンプのキャラクターは「Preamp」の量でコントロールができます。ここで地味に便利なのが、Preampを上げ下げしてもレベルがほとんど変わらない点!
多くのプリアンプ・モデリングでは、実機同様にPreampによって音量と質感(色付けの量)が変化しますが、Model N Channelは音量はある程度保たれるので、純粋に どの位の色付けが欲しいか という目的で使うことができます。
また、LINE / MICの切り替えも可能です。実際のハードウェアだとラインとマイクの信号の違いによって切り替えますが、プラグインの場合は味付けのキャラクター違いとして使えばOKだと思います。MICの方がしっかりと色がのる感じですが、この辺りは音を鳴らしながら切り替えてしっくりくる方を選べばOKだと思います!
Compressor セクション
続くコンプレッサー・セクションは、70年代のビンテージ個体をモデリング。こちらも2タイプのキャラクターが選択できます。
・25
70年代のヴィンテージの個体のモデリング。派手なサウンドで、ドラムやボーカルに向いてます。VoosteQ Model N Channel User Guideより
・32
70年代のヴィンテージの個体のモデリング。少し落ち着いたサウンドでベース、ギター、キーボードなど幅広く向いてます。
2254や32264がベースだと思いますが、個人的にModel N Channelで一番グッときたのが、実はここ。Neve系というとプリアンプの歪みやEQの方が特徴的だと思いますし、もちろんそれも大好きなのですが…。
正直にいうとこれまでのNeve系コンプのモデリング・プラグインでしっくりきたことがなく、使い道が見出せないことがほどんどだったのですが、これはすごく欲しい感じにかかってくれます 笑
どちらもアタックタイムのパラメーターはない(実機同様)ので、使い所はちょっと限られるかもしれませんが、やんちゃでビートやトランジェントのはっきりとしたサウンドで気持ちいい25と、汎用性の32といった具合で、すごくしっくりきました。
また「SLAM」スイッチは内部処理が変更になるようで、ONにすることでシャキッと感が出てくれます。
EQセクション
EQももちろんモデリングで、3タイプの特性を切り替えることができます。
・84
70年代のヴィンテージの個体のモデリング。
オリジナルの実機同様に中低域に少しクセのあるサウンドです。・31
80年代のヴィンテージの個体のモデリング。
オリジナルの実機同様に広めのQで自然な音作りが可能です。・Mod
VoosteQ Model N Channel User Guideより
近年リリースされた個体のモデリング。
比較的フラットで低域の質感や高域の伸びに特徴のあるタイプです。
Neve系のEQは、操作と音の変化がリニアでイメージ通りの音になってくれる感覚が大好きなのですが、Model N Channelの挙動も楽器的というか、気持ち良く触っていけます。というか、純粋に楽しい!
タイプによってQカーブと倍音感が変わるので、どの特性が好きかで選べばOKだと思います。
Master Section
RoutingでEQとコンプの順番を入れ替えたり、オーバーサンプリングを行ったりとプラグイン全体の挙動をコントロールするのがMaster Sectionです。
中でも面白いのが Condition のパラメーターです。これは各モジュールの使い込み感をシミュレートする機能で、新品時のクリアな特性から、使い込まれた後の少しゆるい感じというか落ち着いた特性を再現できます。そして、このパラメーターを変化させるるとGUIまで変化するというこだわりっぷり! サウンド的には、全モジュールのトーンに影響するのですが、どのくらいの「味」が欲しいかという調整に使えそうです。
またMaterial Compにもあった「Analog Flavor」も搭載。Neve N Channelの場合は、Neveらしさを左右すると言われるトランスやアナログ回路をシミュレートすることができます。
みんな大好き、ビンテージNeveでお馴染みのM-AIR(マリンエア)や現代的なCRN-H(カーンヒル)が選べたりとロマン溢れる仕様ですが、ここでもサウンドは大きく変化します。
とにかく楽しい!そして安い…
実際に使ってみた印象は、とにかく楽しい! 見た目のカッコ良さも含めて、いじってる感やグッとくる感じが抜群です。
プリアンプ、コンプ、EQの各モジュールそれぞれの完成度が高いというのはもちろんなのですが、各モジュールを個別に考えるというよりも、プラグイン全体で音を作っていく 最強のキャラクター付けツールといった表現が一番しっくりきました。
Neve系だと、これまでLindelの80 Seriesの質感が好きで使っていましたが、こっちの方がグッときます。。
もちろんチャンネルにインサートしてチャンネル・ストリップ的に使っても良いですし、使う人や用途によってどんな風にも使えそう…。と書きながら気づきましたが、これはMaterial Compにも通ずる部分なのかもしれません。
最後になりましたが、値段がバグっています。定価$100で、内容とクオリティーを考えるとこれでも安いと思いますが、イントロプライスで$19.9。ぜひチェックしてみてください!