2Mixを分離・編集できるHit’nMix / RipXをレビュー(動画あり)
講師の鈴木です。
今回はHit’nMixのRipXというソフトウェアを紹介します!
このRipXがどんなソフトなのか…というと、2Mixのオーディオを各パーツやステムに分解し、再編集できる。という夢のようなソフト。2Mixからボーカルを抜き出してリミックスをオフボーカル制作やリミックス用途に使ったり、耳コピに役立てたりと様々な使い方ができる多機能かつ超便利なツールです。
膨大な機能が搭載されているのですが、主な機能とできることを具体的にみていきましょう!
文字と画像だけだと分かりにくい部分も多いので、ぜひ動画と合わせてご覧くださいませ。
2Mixをパーツごとに分離する
RipXはスタンドアロンで動作するアプリケーションで、オーディオファイルを読み込んで使用します。Wavだけでなくmp3やFLACも直接インポートが可能です。
読み込む際に単体楽器の演奏なのか、複数のパートで構成された楽曲なのかを選択し、それぞれのタイプで選択できるオプションが変化します。例えばMultiple Instruments & Soundでは、どんなパーツを取り出(分離)したいのかを個別に選ぶことができます。要素として選択できるのは、
・Voice
・Bass
・Other Sound & Instrumenhts
・Drum & Percussion
・Separate Guitar & Piano
の5種類です。また、単純にこれらの要素を分離だけして別ファイルとして書き出す場合には Save Stem Onlyを選択すればOKです。
この解析にはAI技術が使われており、選択項目によって解析時間が異なります。
使用するパソコンのスペックによっても変化すると思いますが、今回の環境(M1 MaxのMacStudio )の場合だと約4分の曲を解析するのに6分程度かかりました。なおこの解析は初回読み込み時だけに必要です。
解析が終わると、このように表示されます。
各パートがピアノロール的に表示され「Layers」の項目で解析された各パーツのソロ/ミュートや音量バランスを調整することができます。また、各パーツのLow / Mid / High単位でEQ的な音量調整も可能です。
気になる分離時の音質については動画で確認していただきたいですが、曲によっても変わってきますが使用する上で全く問題ない…というより調整できる細かさを考えるとかなり良いと思います! 特にボーカルやビートを抜き出したい(逆にオフにしたい)や、フレーズの耳コピに使用したいという用途であれば、十分すぎるクオリティーに感じました。
解析したフレーズが編集できる!?
単にステム分解するだけなら、iZotopeのRXシリーズや最近ではフリーのサービスでもできてしまいますが、RipXがすごいのはここから。何と解析したフレーズを1音単位で、音程やタイミングといった各種編集が行えてしまいます!
操作自体はピアノロールでのMIDI編集そのまま。画面上のノートをマウスで上下にドラッグすると音程、左右のドラッグでタイミングや長さをダイレクトにコントロールできます。
この辺りの操作感は、ちょうどCelemonyのMelodyneに似ているのですが、カット/ペーストやデュプリケート(複製)といったお馴染みの編集も自由自在。自作曲で使うことはないかもしれませんが、リミックスを作る際にメインのボーカルの一部をハモらせたい! とかコードのメジャーとマイナーを入れ替えたいなんて編集もいとも簡単に行えます。
クリエイティブ・エディットにも対応
また画面の右側には各種エフェクト機能が配置されています。「Pitch」「Time」「Level」「Sound」「Preset」「Repair」と用途ごとに分かれており、1音単位で適用することができます。
例えばボーカルのロングノートにビブラートを掛けたり、コード弾きのピアノをアルペジオっぽくずらす、不要な音をミュート(ボリュームを下げる)たり、左から鳴っているギターをセンターに寄せる…等々。まさに”やりたい放題”な編集が行えます。
MIDI書き出しまで可能
解析したパートやステムは、もちろん個別ファイルとしてエクスポートが行えます。
ここでびっくりしたのが、オーディオ・ファイルだけでなく特定のパート単位でMIDIデータとして書き出せる点。検出結果によっては意図しないノートが入ってしまったり、ある程度はデータの掃除が必要ではあるものの、ガイドとして確認したりパーツとして抜き出したりと活用の範囲はかなり広いと思います。
耳コピにも最適!
DAWユーザー的に見ると、特定のパートだけを抜き出してリミックスに活用するというだけでなく、既存の楽曲の分析や耳コピ用途にも最高のツールだと思います。
分解できる範囲が細かいので、特にコピーの難易度の高い中域の音を確認できるのは控えめにいって最高!
例えばiZotopeのRX10のMusic Rebalanceでは、Vocal、Bass、Percussion、Otherの4要素に分解、バランス調整が行えます。セパレーション能力は高いのですが、ピアノだけ聴きわけたい…というのは耳の分析能力も必要になります。
その点RIpXはもっと細かく分解してくれますし、特に驚いたのが弦パートの分解。トップとボトムノートはもちろんその間にあるビオラパートまでしっかり分離して聞けるようになりますので、内声の動きを把握するのにこれ以上ないほど便利です。
またRipXエディタ内で直接再生テンポを変更することもできるので、早いフレーズをゆっくり聴きたいなんてニーズにもバッチリです。
オーディオ・リペア用途にも
上位バージョンになると使用可能な「Harmonic Editor」機能を使えば、ハーモニクスの編集も可能になります。
楽器音に混じってノイズが入ってしまった…なんて場合にも、特定のスペクトル範囲のみ成分をピンポイントで消せるので高性能なノイズリダクション・ツールとしても使用可能です。
まとめ
できることが多いだけにまだまだ把握できていない機能もたくさんあるのですが、パッと見ただけでもこれだけのことが行えます。
個々の機能単位で見ると、他の製品でも実現できますが、実際に触ってみて感じたRipX最大の魅力は、これらを1ツールで統合して行えること。複数のアプリケーションを行ったり来たりする必要がありませんし、1アプリ内で完結できるワークフローの中でしかなし得ないことは確実にあると思います。
ベーシックな機能が使用可能な「RipX DeepRemix」なら$99で手に入りますので、どんな使い方をする方でも持っておいて損はしませんよ!