Triton Audio / FetHeadシリーズ4製品のサウンドを聴き比べ!(動画あり)
講師の鈴木です。
今回はオランダの音響機器メーカー、Triton Audioのインライン・プリアンプ「Fetheadシリーズ」4製品を一挙にご紹介します!
ダイナミック・マイクを使うときに大きな問題となる「音量不足」を解決してくれる、ダイナミック・マイクの必須アイテムです。
インライン・プリアンプ FetHeadとは
そもそもインライン・プリアンプとは、マイクとマイク・プリアンプ(オーディオ・インターフェース)の間に接続することで、マイクのゲインを稼ぐことのできるアイテムです。
構造上、ダイナミック・マイクはコンデンサー・マイクと比べてゲインが小さくなってしまうので、使用するプリアンプによっては、必要なゲインを稼ぎきれない…という問題が起こります。
特にUSBバスパワーで駆動するようなオーディオ・インターフェースや、安価なミキサー/マイク・プリアンプでは、ゲインつまみを最大に設定しても、ちょっと小さいかも…というケースは多いと思います。
音量が稼げないだけでなく、ゲインを上げていくとどうしてもSNが悪くなったりと、ダイナミック・マイクを適切に使用するのは、実は結構大変だったりします。
そんな背景から開発され、今では当たり前に使われるようになったのが今回紹介するFetHeadのような「インライン・プリアンプ」です。
FetHeadシリーズの魅力
個人的に、FetHeadシリーズの大きな魅力は小ささにあると思っています。
例えばCL-1はD.I.のようなサイズ感で、接続するにはマイク・ケーブルが余計に1本必要です。DM1はマイクに直接接続できますが、本体サイズは100mmほどありますし、重量も80g。マイクの重心が変わってしまい、卓上やデスクアーム・タイプのマイク・スタンドで使うのはバランスが悪くなってしまいます。特に、人気のShure「SM7B」の重量はおよそ300g。インライン・プリアンプと使うと380gにもなるので、セッティングには気を遣う必要が出てきます。
その点、FetHeadシリーズはマイク直結タイプで、サイズも76mmで重量は55g程度。一回りコンパクトで、いつも通りのセッティングに組み込むことができます。
私自身、動画収録やライブ配信時には卓上のブームスタンドを使っているのですが、SM7BとFetHeadの組み合わせでは、重量バランスも特に気にせずに使えています。
また今回の動画のテーマでもあるのですが、FetHeadシリーズにはサウンド・キャラクターのバリエーションが用意されており、好みの質感に合わせて選べる楽しさがあるのもライバル製品との大きな違いです。
シリーズ・ラインナップとサウンド・インプレッション
今回は4タイプのバリエーションを紹介します。
「音量を引き上げる」という本来の目的においては、どのモデルとも高いパフォーマンスを発揮してくれます。音量は上がるけれど、元々の音質が劇的に変化することもないですし、当然ノイズが増えるといったデメリットはありません。基本的には、どのモデルも色付けを最小限に抑えたクリーン・ブースターとして動作し、そこにさらにモデルごとのフレバーが付く…そんなイメージです。
動画ではナレーションやボーカル、楽器で撮り比べてみたのですが、ソースによって差がはっきり出るもの / 違いが分かりにくいものはあると思います。これは使用するマイクや録音環境、元々の声質等が関係していると思いますが、傾向としてはすべて同じ感触ですので、ぜひ動画と合わせてご確認ください!
FetHead
最もスタンダードなモデルで、クラスAのFETアンプ回路が内蔵されており、マイク・プリアンプからのファンタム電源で動作*。使用するマイクのゲインを最大27dB引き上げることができます。
*ファンタム電源はFetHeadの駆動用で、マイク本体に電流が流れることはありません
サウンドとしては、基本的には元々のサウンド・キャラクターをクリーンに引き上げてくれる印象で、他のモデルと聴き比べるとまさに「万能」といった表現がぴったり。迷ったらコレを選んでおけば失敗することはなさそうです!
FetHead Germanium
FET技術に、厳選されたNew Old Stockのゲルマニウム・トランジスタを組み合わせ、サウンドにゲルマニウムのキャラクターを付加したモデルです。今回紹介する中で、もっともブースト量も多く29dB 。実際には数値以上に大きな変化を感じました。
ゲルマニウムの色が加わることで1段階パワフルになり、ソースによっては高域に”ギラッ”としたキャラクターが加わります。派手目なサウンドになるので、声にヌケ感を出したいときにも良いかもしれません。
FetHead Transformer
こちらはFET技術に、カスタムメイドのニッケルコア・トランスフォーマーを追加したモデルで、28dBのブーストが行えます。
トランスが加わることで、重心が落ちて同時に色気が加わるので、一段高級なマイクになったような質感を得られます。
今回テストした中で、個人的にも1番グッときたのもTransformerで、SM7Bの良い部分を活かしつつ上品に仕上げた…もっと直接的に言ってしまえば、レコーディング向きの質感を得られました。
FetHead Filter
その名のとおりフィルター回路を組み込んだモデルで、27dBのブーストが行えます。
フィルターは220Hzで6dB/octということですが、信号パスに直接かかるのではなくアンプのゲイン段にかけられているので、元々の特性が劇的に変化(カット)されるということはありません。
とはいっても確実にスッキリ系の音になるので、低域をしっかりキャプチャーしたいときには不向き。FetHead Filterが効果を発揮するシーンといえば、やはり近接効果が気になる場合。特にマイクに近付いてしゃべることが多い場合では、マイクやHAでローカットを入れるよりもFetHead Filterの方が自然な仕上がりになります。