ミックスで行き詰まったときに思い出して欲しい5つのポイント

講師の鈴木です。
今回から始まったメンバー限定記事。これまでよりもう一段階踏み込んだ内容にしていくつもりですので、今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m

初回は、最近のレッスンでご要望のもっとも多い「ミックス」について。曲作りやアレンジに比べて、どうしても知識や技術の壁を感じやすい作業ですので、ある意味当然かもしれません。中でも「作業していく内に、よく分かんなくなっちゃって…」というご質問が多いので、そんなときにご案内しているポイントについて紹介してみたいと思います。

1.ミックスの基本はボリューム調整

ミックスで”どういう音にしたいか”はケースバイケースだと思いますが、どんな場合でも「音楽として聞きやすいものである」ことが前提条件になるはずです。その上で、「カッコ良い音」だったり「厚みのある音」といった具合に、音の方向性やキャラクターが決まってくるのではないでしょうか。

そんなときに思い出して欲しいのが、ミックスの基本はボリューム調整ということです。チャンネル・フェーダーはもちろん、パンだって左右の音量バランスです。もっと言えばコンプは時間変化での音量(ダイナミクス)調整ですし、EQは周波数ごとの音量調整と考えることができるはずです。
逆に見れば、ボリュームとパンが決まれば、もしかしたらEQやコンプが不要になることだってあり得るはずです。まずはフェーダーとパンで全体的なバランスを作り、そこから足りない部分、出過ぎている部分をエフェクトで処理していくのがオススメです。

 

2.プラグインを使う意味を考えてみる

1とも被る部分がありますが、一度、インサートしたプラグインを外してみるのも効果的です。
レッスンでは、生徒さまのプロジェクトを送って頂き、こちらで軽くミックスしたものを聞いて頂きながら進めることが多いのですが、全体的に感じるのはインサートされているプラグインの多さ。もちろん、多いのがダメということではありませんし、そのエフェクトに意味や意図があればまったく問題ないと思うのですが、お話を聞いていると「とりあえず入れてみた」というケースが多いように感じます。

確かにプラグインを使うことで作れる音のバリエーションは一気に広がりますが、それだけ調整しなくてはいけないパラメーターが増えるということ。例えば、元の音源(素材)はダイナミクスもあって迫力があるのに、コンプで潰しすぎてしまったことで音が奥に引っ込んでしまい、楽曲全体のメリハリがなくなってしまう…なんてケース。音作りに悩んでしまったときは、一度プラグインをバイパスして元の音を聞いてみると、何かしら気付くことがあるはずです。

プラグインを使うときには「何をどうしたいのか」という目的をハッキリ意識すると、不要なエフェクト処理や掛けすぎを防げるような気がします。

 

3.基準を作って、足すより引くを優先する

心理的には、引くよりも足す方がやりやすいと思いますが、ミックスにおいては全体的に「引く」ことを基本に考えるのがおすすめです。例えばオケに埋もれない音を作りたい。というときに、そのトラックのボリュームを上げるのではなく、他のパートのボリュームや被っている帯域をカットするといった感じです。

というのも、何かを「足す」と、それ以外の色々な部分にも影響が出てしまうことが多く、影響する部分の帳尻合わせが必要になってしまうから。ボリュームの場合、どんどん全体のレベルが上がっていってしまいますし、EQの場合は位相がずれる原因にもなります(これは必ずしも悪いことではありませんが)。

そのときに重要になってくるのが、基準となるレベルを見つけることだと思います。ミックスダウンの場合、すべての音が入った状態でマスター・フェーダーがピークを超えないようにするのが原則ですから、ある程度のマージンを持ってレベルを設定する必要があるはずです。歌モノの場合、私が普段目安にしているのがドラム。ドラム全体を鳴らしたときにピークが-6dB付近になるようなレベルに設定しておくと、他の楽器を(一般的なバランスで)入れた場合にもピークを切ることがないと思いますので、試してみてください。

また、バランスを取ったり音を作るときには、ソロで聞くのではなくて必ず他のトラックを比較対象にすると設定しやすいと思います。例えばこの音に対して、このトラックの音は大きい/小さいのか。近い/遠いのか…といった具合に2つを比較するようにしていくと、感覚的に作業できるのではないでしょうか。

 

4.雑誌やノウハウ本の情報を信用しすぎない

最近はミックスに関するノウハウ記事や書籍が色々発売されています。この投稿もそんな1つですが(笑)。それだけ悩んでいる人が多いということだと思います。そういった情報は非常に有意義なものが多いですが、すべてを信用過ぎると落とし穴もあると思います。

中でも、「○○(楽器名)の場合は△△Hzを××dBブーストする」とか、実際に数値で紹介しているもの。参考にするのは良いと思いますが、元の素材も使うプラグインも違うので、その通りに設定しても求める音にはならないですし、逆効果になってしまう可能性だってあります。もっと言えばミックスは曲全体で考える必要がありますから、他にどんなパートがどんな構成、フレーズで鳴るのかによっても処理の方向が変わってくると思います。気持ちは凄く分かるのですが、そういった「数値」はアテにしない方が良いと思います。

 

5.ミックスでできることは、実はそんなに多くない

最後の5つ目。個人的には1番大切だと思っているのですが、良いミックスに1番必要なのは、良い楽曲と良い素材です。元も子もなくなってしまいそうですが(笑)。これを読んでいる多くの方は、自分で曲を作ってアレンジまでやっている非エンジニアの方だと思いますので、あえて触れてみました。
ミックス作業は、あくまで、すでにある素材に味付けをしていく作業ですから、元々の方向性をねじ曲げようとすると絶対的に無理が生じます。極端な例ですが、どんなに腕の良いエンジニアさんでも、微妙なテイクを最高のテイクにすることはできませんし、どんなに高価なプラグインやアウトボードを使っても、微妙な素材が急に良くなるということは基本的にありません。

ならどうすれば良いか、ですが、アレンジの段階で音色選びやフレーズ作りに時間を掛けることが大切だと思います。例えば、音圧を稼ぎたいのであれば、すき間が上手く埋まるような音色と楽器構成を考える必要があります。細かく見ていくとキリがありませんが、ドラム/パーカッションならほんの少しピッチが変わるだけでEQしなくても聞こえ方がグッと変わりますし、シンセのフィルターを調整する。左右のギターの音色やフレーズを工夫する…なんて具合に、曲作りとアレンジ段階でできる工夫が沢山あります。

マスタリングまですべて自分でやる、という場合に1番難しいのは、各作業での切り分けだと思いますが、逆に見ればアレンジとミックスの作業を分けて考える必要もないので、ある程度楽曲のイメージが固まってきた段階から、最終的な完成系を意識するようにすると、大分変わってくるのではないかと思います。

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